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第73話 新米貴族は王都に戻る

 太陽が真上まで昇った頃、オレ達は王都付近まで帰還した。

 遠くにその外観が見えている。


 このまま傭兵ギルドへと向かって、生首だけ提供して城に戻るつもりだった。

 馬車に載せた他の収穫はどうしたものだろう。

 持ち歩くのも面倒だが、国王に明け渡すのも癪である。

 屍王のアンデッドに持たせて、ロードレスに持ち帰らせるのが無難か。


「ふむ、何やら騒がしいな」


 ラトエッダが怪訝な顔をした。

 その視線を追うと、王都の手前辺りに人だかりができている。


 服装からしてあれは兵士だろうか。

 喧騒も聞こえてくる。


(戦いでも起こっているのか?)


 この血気盛んな雰囲気はきっとそれだろう。

 兵士達は何かを囲うように陣形を組んでいた。


 結界魔術も張ってあるようだった。

 何者かを閉じ込めているらしい。

 そこで戦闘が展開されているのだとしたら、まるで見世物だと思うのだが。


「状況がよく分からん。馬車を頼んでもいいか?」


「もちろんだとも」


 了承したラトエッダに任せて、俺は身軽な状態で駆け出した。

 一度も止まらずに集まった兵士達のもとに到着する。


「そら、どいたどいた」


 オレは兵士を押し退けながら中央部を目指す。

 兵士共は迷惑そうにするが、オレが着けた血みどろの仮面を目にした途端、慌てて道を開け始めた。

 文句を言おうとしたのが何者なのか気付いたようだ。


 それ以降は大した労力をかけずに、人だかりの中心付近まで行くことができた。

 オレは結界魔術越しにその向こう側を窺う。


 隔離された空間はそれなりの広さが確保されていた。

 そこでは壮絶な殺し合いが繰り広げられている。


 濃厚な瘴気を渦巻きながら、大量のアンデッドが前進する。

 骨が飛び出していたり、肉が溶けていたりと形状は千差万別だ。

 たぶん複数の死体を組み合わせて造っているのだろう。


 両手を振ってそれを操るのは屍王だ。

 死霊魔術を得意とする吸血鬼の女である。


「グハハハハァッ! この程度で負けぬものかァッ!」


 豪快な笑い声と共に、紫色の雷撃が拡散された。

 雪崩れ込むアンデッドがあっけなく焼き払われていく。

 分厚い肉壁のような個体にも穴が開いて、糸が切れたように倒れた。


 雷撃の発生源は、苔の生えたスケルトンだった。

 身体の一部が綻びており、衣服も擦り切れてみすぼらしい。

 しかし、それを補って余りあるほどに獰猛な気配を纏っていた。

 骸骨だというのに、とびきりの笑顔であるのがはっきりと分かる。


 あのスケルトンこそ雷王だった。

 狂気的なまでに戦いを求める人外男である。


 そんな雷王の隣には、黒髪の陰気そうな女が佇んでいた。

 見ているだけで鬱々とする顔だ。

 女が視線を動かすたびに、アンデッドの形が崩れていく。


 急速に腐敗しているのだ。

 どろどろになった肉の液体が地面に染み込んでいった。

 陰気な女の口が笑みに歪む。


 あいつが毒王だ。

 引きこもり体質の腐れ女である。


 周囲の兵士達は、この戦いを見守っているのだった。


(一体こいつはどういう状況だ?)


 片眉を上げたオレは口を曲げて唸る。

 詳細は不明だが、懸念していたことが現実になってしまったらしい。

 国の中央地である王都前にて、ロードレスの王達が命の奪い合いをしていた。

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