第67話 新米貴族は執事と語り合う
オレとフレッドは黙々と食事を進める。
時折、追加注文を行った。
すると青い顔をした店員が、酒と料理の提供と片付けの往復に追われている。
実に忙しそうだが遠慮せずに頼んでいく。
ここはフレッドの奢りなのだ。
気にせず飲み食いしまくる所存であった。
当のフレッドは一杯の紅茶しか注文していないが、ここで躊躇う方が失礼だろう。
気まずい空気を無視して食事を堪能していると、突如としてフレッドが発言する。
「そのふざけた態度を、いつまで続けられるおつもりなのでしょう」
「ふざけた態度? オレは常に真面目だがね。真面目すぎて困っているくらいさ」
「…………」
フレッドがオレの軽口に黙り込む。
ひりついた空気が漂い始めた。
その時、背後で皿の割れる音がした。
恐怖を覚えた店員が手を滑らせたのだ。
泣きそうな店員を横目に、オレは肩をすくめる。
皿に残る骨付き肉をつまみつつ、脚を組んで笑った。
「何か言いたいことがあるなら、はっきり言えよ」
「よろしいのですね?」
「ああ、構わねぇよ」
オレが手を振って促すと、フレッドは姿勢を正したまま述べた。
「あなたは王国の害です。ここで死になさい」
「――ほう」
食事を止めたオレは笑みを深める。
近付こうとする店員を一瞥した。
顎をしゃくると、店員は背を向けて逃げ出した。
オレの気遣いも無視して、フレッドは濃密な殺気を帯びていく。
「狂戦士などと呼ばれながら、実際な隙だらけで大したことがない。その気になれば、五回は殺せているでしょう」
「言葉ばかりの自慢かよ。つまらねぇな。実際に試してから言うべきだと思うがね」
「…………」
フレッドの顔から感情が消えた。
瞬きをしない双眸が、オレだけを凝視している。
オレは燻る狂気を感じながら視線を返した。
次の瞬間、オレとフレッドは同時に動き出した。
跳ね上がるようにして立ち上がる。
オレは椅子を持ち上げて叩き付けた。
対するフレッド、食事用のナイフを掴んで振り抜く。
微塵の躊躇もなく、互いの武器が衝突した。
切断された椅子の脚が宙を舞う。
オレの手首が半ば切断されて、ぷらぷらと頼りなく揺れていた。
一方でフレッドは真っ赤に腫れた片手を睨んでいる。
「まずは痛み分けか」
「……っ」
オレの言葉にフレッドが歯噛みする。
演技臭い笑顔は剥がれて、今や野獣のような鋭さを見せている。
傭兵ギルドを舞台に、オレ達は殺し合いを始めるのであった。




