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狂戦士は平凡な貴族になりたい ~新米領主の領地開拓スローターライフ~  作者: 結城 からく


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第57話 新米貴族は子爵の因縁を目にする

 子爵の新たな一面に驚いていると、応接間の扉が開かれた。

 間もなく入室したのは、貴族服を着た一人の女性だ。


「失礼しますわ」


 金色の豪華な巻き髪に、真紅の衣服がよく似合う。

 自信に満ちた顔をする一方で、こちらを見下すような眼差しだった。

 傲慢さがありありと表れている。


 もし今の主導権がルードなら、即座に襲いかかったのではないか。

 そう思うほどに典型的な貴族である。


 紅茶を飲む手を止めた子爵は、腕組みをして尋ねた。


「国王が来るとの話だったが、君が代理なのかね」


「いいえ、代理ではありません。わたくしは進行役に選ばれましたの。先んじて到着しただけですわ」


 相手の貴族は冷淡に応じる。

 どうやら知り合いらしい。

 ただ、執事フレッドの時と同じくらい険悪だ。

 張り詰めた空気は、当事者でない僕でも呼吸がしづらいほどであった。


(この人は誰だろう)


 僕が疑問に思っていると、それを察した子爵が答えを提示してくれた。


「彼女はランクレイ准伯爵だ」


「……っ」


 答えを知った僕は、驚いて目の前の人物を見る。

 対面に座った貴族――ランクレイ准伯爵は鬱陶しそうに鼻を鳴らす。


 その名前は非常に印象深い。

 僕をロードレス領主に推薦し、子爵を困らせようとした人物である。


 それにしても、辺境の貴族がなぜ王都に来ているのか。

 昨今、国内で大きな動きはなかったと聞いている。

 あるとすればロードレス領くらいだろう。


(……まさか、今回の王都召集も准伯爵が仕組んだのか?)


 僕が根拠のない予想をする中、当の准伯爵はじっと僕を見つめていた。


「あなたがロードレス領主よね?」


「は、はい。そうです」


 僕は戸惑いがちに頷く。

 次の瞬間、准伯爵が僕の胸倉を掴んで引っ張ってきた。

 机に膝をぶつけるが、驚きのせいで痛がる余裕もない。


 准伯爵は吐き捨てるように言う。


「覇気も無ければ、大した面白味もない。三流未満の貴族ね。想像以上に貧相ですこと」


「はぁ……」


「言っておくけれど、ロードレス領の掌握はあなたの手柄ではないから。その辺りを勘違いしないで。すべてはわたくしの采配なのよ」


 そう言って准伯爵が手を放す。


 僕は喉を撫でながら咳をした。

 子爵は深々とため息を洩らして、批難めいた口調で発言する。


「辛辣だな。エリスの努力を認めることもできないのかね。采配とは言っても、彼に面倒事を押し付けただけではないか」


「あなたには話していませんわ。黙ってくださる?」


 准伯爵は子爵の言葉を受け流すと、何かを思い出したような顔をする。


「そうそう、国王から事前に指示を受けていたのだったわ」


 彼女はおもむろに身を乗り出して、僕の懐に手を差し込む。

 そこから強引に鉄仮面を抜き出した。

 僕が混乱する間に、准伯爵は嘲るように仮面を振ってみせる。


「持ち物検査よ。危険物は預からせてもらうわ」

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