第52話 新米貴族は屍王の力を見せつけられる
翌日、僕と子爵は屍王を同行者に加えて出発した。
引き続き王都に向けて移動していく。
今までは平和な旅路だった。
それは屍王が先回りして、暗殺者を倒していたためだ。
故に彼女が事前に処理していない道のりは、極めて過酷で凄惨であった。
具体的には道が破壊されていたり、至る所で暗殺者が襲撃を仕掛けてきたのだ。
素性の分かる持ち物は見つからなかったが、おそらく僕達の握る利権が目当ての貴族が派遣したのだと思う。
複数の貴族が手を組んで狙っているに違いない。
王国内の貴族社会は、とても醜悪である。
外面は悪くないが、その裏では常に腹の探り合いが繰り返されていた。
陰謀と陰謀が絡み合う場所で、ルードが最も嫌う性質だった。
逆に貴族達からも彼の力は忌避されている。
制御できない暴力ほど厄介なものはない。
暗殺者達は、幾度も僕達に襲いかかってきた。
心臓に悪い出来事だが、僕達が傷付いたり、苦労することは一切なかった。
何かする前に、屍王は残らず片付けてしまうからだ。
彼女の能力は圧倒的であった。
僕達の周囲一帯にアンデッドを配置して常に警備させることで、どこから接近されてもすぐさま感知できるのだ。
暗殺者が現れれば、すぐさまアンデッドを殺到させて始末してしまう。
アンデッドが自動的に動いて盾になるため、遠距離からの攻撃にも完璧に対応していた。
おかげで僕達が被害を受けることはない。
無数のアンデッドに囲まれ続けるという状況は、あまり気が休まらないものの、精神衛生上の懸念を除けば実に安全だった。
少なくとも文句を言える立場ではないだろう。
「領外の暗殺者って弱いのね。まるで赤ん坊みたいだわ」
「ロードレスの基準だとそうだろうな。あそこは周辺諸国と比べても異常なのだよ」
「そうなのねぇ……ちょっと誇らしいわ」
先導する屍王は嬉しそうに言う。
彼女は僕に近寄ってくると、満面の笑みで囁いてきた。
「エリス君はゆっくりしててね。邪魔者はあたしが皆殺しにしちゃうから!」
「は、はい。ありがとうございます」
僕はぎこちない顔で、感謝の言葉を述べることしかできなかった。
屍王の恐ろしさに戦慄していると、子爵が小声で説明してくれる。
「ちなみにルードは、彼女の配下を残らず叩き潰して一騎打ちに持ち込んでみせた。ほぼ無尽蔵に蘇るアンデッドの軍勢を、巨人用の剣でひたすら切り刻んで殲滅したのだ。目撃者は少なかったが圧巻の戦いだったよ」
「凄まじいですね」
「あそこまで正面突破で勝利するとは、さすがに私も予想外だったな。それが屍王の誇りを傷付けたようだ」
「なるほど」
奔放そうに見える屍王にも、相応の矜持があるようだ。
怒らせないように注意しなければ。




