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狂戦士は平凡な貴族になりたい ~新米領主の領地開拓スローターライフ~  作者: 結城 からく


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第50話 新米貴族は困惑する

 突然のことに僕は驚愕していた。

 頭が真っ白になって、全身の動きが止まる。


 数拍の間を置いて我に返った後、やんわりと女性を引き離そうとする。

 しかしそれは失敗した。

 抱き付く力が強すぎて、とても敵わなかったのだ。

 僕が貧弱というのもあるが、それ以上に相手の膂力が異常である。

 まるで魔獣か何かに拘束されているかのようだった。


 とにかく、無理やり引き剥がすことはできない。

 危害を加える意図はないおかげで、僕はなんとか冷静になれた。

 結果、今の姿勢のまま会話に応じることに決める。


「ぼ、僕が確かにエリスですが……」


「やっぱり! 想像通りの男の子ね! うんうん、とても良いわっ!」


 その女性は間近で僕の顔を凝視してくる。

 刹那、フードの合間から真紅の瞳が覗いた。

 魔性の輝きを帯びている。


 歓喜に震える顔は、言葉には言い表せないほどの美貌を誇る。

 しかし、どこか人間らしさが薄い気がした。

 考えながら目を合わせていると奇妙な感覚に囚われそうになる。


 嫌な予感を覚えた僕は、咄嗟に視線を逸らした。


(まさか吸血鬼なのか……?)


 魅了の力を持つ種族として、真っ先に思い付いたのだ。

 おそらくそう間違ってはいないと思う。

 眼前の人物は、人間離れした力を持っている。

 それも破格の能力だろう。


 僕が密かに戦慄していると、その女性はようやく抱き付きを止めた。

 そして、優雅な仕草と共に自己紹介をする。


「初めまして、あたしが屍王よ。よろしくね」


「よ、よろしくお願いします」


 僕は流れるように頭を下げる。

 なんとなく正体は察していたので、驚きは少なかった。

 明らかに常人とは異なる雰囲気だったことに加え、ちょうど子爵と噂をしていたところだったのが大きい。

 他に思い当たる人物もいなかった。


「戸惑いがちなその反応! 色々とくすぐられるわぁ。食べちゃいたいくらいね」


 真紅の瞳の女性――屍王は蕩けそうな笑みを見せながら、ゆっくりとにじり寄ってくる。

 只ならぬ気配に圧されて、僕は椅子ごと後ろに下がった。

 やがて背もたれが壁にぶつかって逃げられなくなる。

 再び抱き付こうとする屍王を止めたのは子爵だった。


「見事に怖がっているぞ。少し自重したまえ」


「なによ。妬いているの?」


「エリスが喰われないか心配なだけだ。屍王を前に気を緩めるほど愚かではない」


「つまらない反応ねぇ。もうちょっと可愛い返しができないのかしら」


 屍王は不服そうに頬を膨らませる。

 僕には何のことだか分からないが、二人の仲がそれなりに良いことは伝わった。

 それなりに気心の知れた間柄なのだろう。


 僕が眠る半年の間で、色々な付き合いがあったらしい。

 まるで友人のような振る舞いである。

 屍王に臆せず、対等に話せる子爵の姿に僕は感服していた。

 これこそが大貴族の本領だろう。


(僕も見習わないといけないな……)


 ルードや子爵、ロードレス領の王達は、誰もが自信に満ち溢れた態度だ。

 彼らの強さにはその精神力が大きく関わっていると思う。

 僕もいつまでも弱腰ではいられなかった。

 領主に相応しい言動を学ばなければ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第50話到達、おめでとうございます! [気になる点] >屍王 これはまた、死園の墓守の物語に出て来た魔術師ネネと同じかそれ以上にヤバいお方だ……。 [一言] 続きも楽しみにしています。
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