第49話 新米貴族は屍王と出会う
数日後、僕達はとある街の宿屋にいた。
ここは王都までの中間地点である。
事前の予定で宿泊すると決めていた場所だった。
街に滞在するのは危険という考えもあったのだが、あまりに襲撃が無いので大丈夫だろうと結論づいたのだ。
子爵も釈然としない様子ながら了承している。
僕達は街の食堂で夕食をとっていた。
「屍王は、本当に僕達と合流するつもりなのでしょうか?」
「そう聞いているがね。奔放な性格だが、きっと約束は守るだろう。彼女は君を気に入っている」
「……っ」
僕は飲んでいた水を反射的に吐き出しそうになる。
胸を叩きながらしばらく咳き込んだ。
予想外の言葉に驚いてしまったのである。
落ち着いたところで水を飲み直していると、子爵が疑問を投げてくる。
「そんなに狼狽してどうしたのだね」
「どうして、僕が屍王に気に入られているのですか? この半年は常にルードが行動していたのですから、面識は一切ないはずなのですが……」
「ああ、そのことか」
子爵が納得したように手を打つ。
彼女は切り分けた肉を口に運びつつ、何かを思い出すように説明をした。
「屍王とは、君の話で盛り上がってね。是非とも会いたいと言っていたよ。ちなみにルードは大層嫌われていたな」
「そ、そうなんですね」
「安心したまえ。彼女に敵意はなかった。危害を加えられることはないだろう」
子爵は僕に言い聞かせるように言う。
優しさが感じられる一方、茶化すような気配が見られた。
動揺する僕の反応を楽しんでいるようだ。
(詳細が気になるな)
僕の話で盛り上がったらしいが、深く聞くと後悔する予感がする。
たぶん間違っていないだろう。
屍王は僕をよほど気に入っているようだ。
王都遠征の同行に立候補するほどだから相当なのだろうと思う。
子爵との話が要因となっているそうだが、ここまでの情報では内容の推測はできない。
(まあ、いきなり殺されるようなことがなければ別にいいか)
食事を進めながら前向きに考えていると、食堂の扉が勢いよく開かれた。
とても大きい音が鳴り響いて、室内の人間が一斉に注目する。
そこには外套を纏う長身の女性が立っていた。
目深に被られた布のせいで顔は見えないものの、口元には蕩けそうな笑みを浮かべている。
それに気付いた僕は、背筋の凍るような悪寒を感じた。
「エリス君! あなたがエリス君なのね!」
僕の名前を呼んだその女性は、凄まじい迫力で抱き付いてきた。




