第46話 新米貴族は新たな問題に直面する
「国王の召集ですか……」
「うむ。私も何度か自分の領地に戻って対策したが、残念ながら避けられないようだ。半年以上も生存する君を見て、ロードレス領の現状を詳しく知りたくなったのだろう」
子爵は悔しげに説明する。
僕の知らないところで尽力してくれていたらしいが、望まない結果に終わったようだ。
一応、王国の主張も筋は通っている。
悪名高きロードレス領が、秩序を得ようとしているのだ。
その根幹に君臨するのがルード・ダガンという暴力の化身だが、明らかに以前とは異なる動きを見せている。
新たな領主である僕が生きているのが最たる点だろう。
国王が関心を向けるのも納得できる状況である。
子爵は僕に顔を寄せると、周囲に聞こえない程度の声で囁く。
「おそらく君の裏側にも気付いているようだ」
「やはり、そうですよね」
「これは隠しようがなかった。ロードレス領で生きていく以上、許容すべき部分だと考えるしかあるまい」
「僕も同意見です」
なるべく知られたくなかったものの、そうも言っていられない段階だ。
ルードの脅威は敵対勢力への牽制にもなり得るため、戦略的な面で考えると悪いことばかりではなかった。
僕が感情的に抵抗しているだけである。
「国王の狙いは何だと思いますか?」
「情報収集もあるだろうが、最終的には統治されたロードレス領の徴収だろう。五人の王が倒されたことは知っているはずだ。ルードの築いた功績を掠め取ろうとしているに違いない」
今まで誰もロードレス領には手出しできなかった。
しかし、ここには潤沢な戦力と独自に発達した技術が芽生えている。
貴族達の目には、さぞ魅力的に映っていることだろう。
「ロードレス領を奪われないことが僕の目的ということですね」
「うむ。半年の努力を国王や他の貴族に取られれば、たちまちルードが暴れ出すだろう。それだけは避けたいからね」
「僕もその展開は嫌です……」
「安心したまえ。召集には私も同伴する。屍王も一緒に遠征したいそうだ。万が一にも命の危険はないはずさ。むしろ王都の心配をした方がいい」
「はぁ……」
屍王とは、ロードレス領の王の一人だ。
死霊術師を得意とする異能者で、彼女の領地にはアンデッドがひしめき合っている。
不毛の地が目立つ領内でも、特に荒廃が深刻らしい。
汚染された大地では死体が勝手に蘇る。
アンデッドは生者を襲って、さらなるアンデッドを増やす。
屍王はそういった土地を治める変わり者だった。
ただ、どうして僕に同行するつもりなのかが分からない。
そもそも会ったこともない人物だ。
理由は不明であるものの、味方なのだとすれば頼もしい限りだった。




