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第31話 新米貴族は打診を受ける

 それから一週間後。

 とある報告を受けた僕は困惑の極みにあった。


「王、ですか?」


「うむ。先ほど連絡があったそうだ」


「突然ですね……」


「それだけ関心を持たれているのだろう」


 応じるのは子爵だ。

 村人達から連絡を受けた彼女が僕に報告をくれたである。


 肝心の内容は簡潔だった。

 王を名乗る男が、僕と会いたいのだという。


 ロードレス領には各地を統治する王が存在する。

 もちろん王国からすれば非正規だが、この無法地帯に異議を唱えたところで意味がない。

 実態として、複数の王が争いながら土地を奪い合っていた。


 僕達のいる地域も王の一人が統治しており、その王が僕と会いたいとのことだった。

 ルード・ダガンの噂や、僕が領主を名乗っていることを聞き付けたのだろう。

 会って何を話したいのかは知らないが、きっと穏やかな内容ではないと思う。


「相手は付近一帯を支配する者だ。今のうちに接触できるのは良い。ついでに配下にしようではないか」


「さすがにそれは難しいのでは……」


「不可能や困難を打ち破らなければ、ロードレス領主にはなれないと思うがね」


 子爵は当然のように述べる。

 僕はいつもの如く反論できない。

 彼女の言葉は自分でも理解していた。


 領主と王の立場と目的は競合する。

 いずれ衝突することは分かっていた。


「無視はできない誘いだ。きっと向こうは、君を配下にするつもりでいる」


「考えることは同じということですね」


「その通りだ」


 子爵が神妙に頷いていると、どこからともなく村長がやってきた。

 彼は憎々しげに唸りながら僕に忠告する。


「エリス様、気を付けなされ。炎王は強い男ですぞ。万物を融解させる炎の異能者です」


「炎の異能者……」


 異能者とは、魔術のような体系化ができない力を持つ人間のことだ。

 大半が固有の特殊能力を持ち、煩雑な詠唱や術式を要せずに力を発揮できる。


 此度の王は強力な炎を操る強者らしい。

 戦いともなれば、非常に厄介だろう。


 心配していると、子爵が僕の肩を叩いた。


「安心したまえ。ルード・ダガンは最強だ。いざという時は、彼がすべて片付けてくれる。君は領主たる態度で挑めばいい」


「そう、ですね。分かりました」


 僕は懐の仮面の感触を意識しながら頷く。

 できれば話し合いで解決したいが、それも不可能に違いない。

 僕自身の力では絶対に敵わない以上、ルードに頼らざるを得なかった。


「留守の間はお任せ下され。エリス様に相応しい拠点と築きましょうぞ」


「えっと……ありがとうざいます」


 力強く握手してきた村長を前に、僕は曖昧な笑みを浮かべるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遅ればせながら、第30部分到達お祝い申し上げます。 [気になる点] さて、どこまでルードにバトンタッチせずに、炎王とやらと渡り合えるか……。 [一言] 今話もありがとうございます!
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