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第23話 新米貴族は村長を脅す

 遅れてやって来たラトエッダは、村人達の惨状を見て呟く。


「壮観だな。さすがは狂戦士と言うべきか」


「褒めたって何も出ないぜ」


 そんなやり取りをしていると、村の奥から新たな人間が現れた。

 村人達に囲われて歩くのは白髭の老人だ。

 杖をついており、腰も曲がって弱そうである。


 しかしその双眸に宿る戦気は、只者ではないことを示唆していた。

 歴戦の猛者だ。

 たまに遭遇する達人の類である。


 オレは疼きを覚えるも、気合で抑制した。

 熱い息を吐きながら唇を噛む。


「親玉の登場か」


「分かっているな。くれぐれも――」


「殺すなって言うんだろう? 何度も言うんじゃねぇよ」


 ラトエッダの忠告を遮り、武器から意識的に手を離す。

 ふとした瞬間に仕掛けてしまいそうだ。

 この欲求に逆らうのが一番難しかった。


 老人は前方で足を止めた。

 先ほど村長を呼びに行くと言っていた奴がいたので、たぶん彼がそうなのだろう。

 杖を少し浮かせた村長は、覇気を帯びた声音で問いかけてくる。


「貴様らがよそ者か」


「ああ、そうだ。素晴らしい歓迎に感謝していたところさ」


 皮肉で応じるも、反応は返ってこない。


「何をしに来た」


「それはこっちの台詞だ、馬鹿野郎。いきなり攻撃してきやがって」


 オレは歯を剥いて罵倒した。

 これは抗議したかったことだった。

 まるで被害者面をしているが、それはオレ達である。

 発情期のゴブリンみたいに突進してきたのは、この村の連中だった。


 だからオレは村長に命令する。


「この村の人間を残らず降伏させろ。さもなければ皆殺しにする」


「……本気で言っておるのか」


「当然だ。逆に訊くが、あんたの目には冗談に映っているのか?」


 オレが血みどろの全身を指し示すと、村長は沈黙する。

 やがて気絶する仲間を見て述べた。


「村には数十の精鋭がおる。貴様ら二人で応戦するつもりか?」


「違うな。二人じゃねぇよ」


 オレは舌を鳴らして否定する。


「どこかに味方を隠しておるのか」


「物分かりの悪い爺さんだな。オレ一人で迎え討つって言ってんだよ。この女は雑用係だ」


「酷い言われようだな」


「黙ってろ」


 ラトエッダによる小声を一蹴し、さらに脅しと挑発を続けた。


「誰でも呼ぶといい。そいつらの首を串刺しにして飾ってやる」


 これが実質的な最終勧告だろう。

 オレは、村人達に問いかける。


「降伏か死か。さっさと選びやがれ」

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[気になる点] >白髭の老人 >杖をついており、腰も曲がって弱そうである。 >しかしその双眸に宿る戦気は、只者ではないことを示唆していた。 >歴戦の猛者だ。 >たまに遭遇する達人の類である。 村長と…
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