第22話 新米貴族は交流を試みる
馬車の残骸を乗り越えたオレは、至近距離からの魔術を両腕で掻き消す。
前腕を少し火傷したものの許容範囲だ。
放っておけばすぐに治る。
強引に距離を詰めてきたオレに、村人達は驚愕する。
「わっ!?」
「何だこいつは……」
「誰か、村長を呼んで来い!」
慌てて身構える彼らは連携が崩れつつあった。
恐怖と混乱が判断力を鈍らせている。
いつもならここで追撃するところだが、オレの目的は皆殺しではない。
手を顔の前に上げると、村人達の制止を試みる。
「待て。戦うつもりはない。オレ達は――」
「死ねェ!」
遮るように叫ぶ声がした。
後列にいる青年がクロスボウから矢を飛ばしてくる。
オレは首に当たる寸前に掴んで止める。
正確な狙いだが、一直線の軌道は対処が楽だ。
たとえ命中したところで死にはしない。
しかし、オレの話を妨害したのは事実である。
はち切れんばかりの怒りが体内を暴走する。
今にも飛び出しそうな足を押さえながら、オレは村人達に語りかけた。
「――てめぇら、さっさと黙りやがれ。殺したくて堪らねぇんだよ」
努めて優しく勧告したことで、大抵の奴らが怯む。
ところが一部は明確に逆らってきた。
「く、くそ! この村から出ていけっ!」
クロスボウの青年は、あろうことか二発目を放ってきやがった。
避けることもできたが、ここはあえて胸で受ける。
鏃が心臓を貫いたと同時に、オレは矢を掴んで引き抜いた。
こみ上げた血を吐き捨てて矢を握り潰す。
そして、煮え滾る殺意を言葉に変換した。
「やったな? オレが我慢してやっているのによォ……」
「あひぃっ!?」
クロスボウの青年は腰を抜かして間抜けな悲鳴を上げた。
全身を震わせて恐怖している。
しっかりと目が合ったせいだ。
その情けない姿を見るに、完全に戦意を喪失していた。
半日はまともに動けないだろう。
オレは村人達を順に指差しながら、狂おしい衝動を抑えて告げる。
「一歩でも動いてみろ。心の底から死にたいと願うような苦痛を与えてやる。その状態で三日三晩は後悔する。どうだ、魅力的な案だろう?」
本気の殺意が彼らを黙らせる。
一切の攻撃させないように縛り付けていた。
気絶する者が続出し、残りも戦う気力を失っている。
場は完全のオレの独壇場と化していた。
ひとまずはこれで大丈夫だろう。




