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「……これ、だって……なんで……」
御津が、ぱっと立ち上がり、白衣をぱっと身につける。その姿を目にして、佐々木は、更に目を丸くした。
その姿を目にして、ショックと共に溢れる感情に襲われたのか佐々木の目から涙が零れ落ちた。
「……いくら探しても、見つけられなかった……これがどういうことなのか解らない……けれど、あれは、あなたなんですね」
「ああ、そうだよ」
二人の目線の先には、春の風とたわめくラベンダー畑。落ち込んだ少年……佐々木の幼い頃の姿。
その少年に語りかける人は、今、目の前に見える姿、御津だった。
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ーー「君の母さんは、僕が連れて行ったんだよ 君の母さんは、もう帰っては来ない ……けれど、君は、絶望してはいけないよ 君の母さんは、君がそうなることを望んでいない」