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「春をつくろうかな……」
ボソッと傍で囁かれた言葉に顔を上げた佐々木。おもむろに口を開く。
「……またいつもの妙な囁き勘弁してくださいよ……こっちは、休憩時間も暑さでまいってるのに……頭がとうとうぶっ壊れたんじゃないスか?」
再び、机に突っ伏す姿に思わず苦笑した様子の御津は、いや、悪い……と、笑った。つい、思ったことが口から出ちまったかな、と頭を苦笑しながらかく。
「あたしの大好きな御津に絡むんじゃないわよ、ささちゃんの癖にな」
幽霊の加奈子が、べったりと机に同化しようとうつ伏せる佐々木の首元に両腕を回した。途端にぞわっとしたのか、真っ青な顔で佐々木が勢いよく顔を上げる。
「やめてくださいよ!僕が幽霊苦手なの、加奈子さん知ってるじゃないスかッ!」
ええー、みえてるくせにな!そう言っちゃう?と、後ろの方で幽霊の加奈子が地味に傷ついているのを尻目に、ジトッとした目で佐々木が御津に不本意そうに声を掛けた。