蛙の独白
難産でした
全然筆が進まねえ
こいつと出会ってから碌でもない事ばかりだった。
「ここでぞろ目とか嘘だろ!?イカサマ猫!」
「イカサマ封じと言って賽を回すように投げる様決めたのは誰だっけ?」
「うが!?」
「さて負けたのだからこれを首から下げてね」
「『負け兎』!?てめーこの前の『負け猫』の首下げ看板の件、根に持ってたな!?」
「僕は根に持つんでね」
これで三人ともに盤双六で負けた首下げ看板の餌食か。
「抗議する!」
「うつけ兎もこうなっては可愛いものだな」
「ただでさえ賭場で浮いているのだから少しは抑えろ。ウクッ」
「蛙も笑ってんじゃねーか!?」
高笑いする様は高貴な人間とは思えない。いやそれを見て笑ってる己も前とはだいぶ変わったのだろう。
★ ☆ ★
始まりは変な事ばかりするうつけの噂だった。
酒を売るわ、人の家に矢を撃ちこむわ、落書きするわととにかく評判が悪かった。それを理由に京から追放すべきだという意見が現実味を帯びていたほどだ。
しかし、ガラクタを秘されたものだと言って売り払うなど貧乏な貴族らしい事をして他所の家を助けていたため関わることはないと思っていた。
「父上?なんと?」
「娘と縁を結ばせるつもりだと言った」
「正気ですか!?公家の恥やうつけと呼ばれる奴ですよ!?」
「あれは我々の常識から外れた考えをもっているだけであり、我々の常識で見ればうつけに見えるだけだ。鳥の見る景色と魚が見る景色が違うようにな。今のうちからつなぎ留めておくのは有益であろう。問題が起きれば切ればよい」
「しかし!」
「もう決めたことだ。そんなに気になるのであれば会って話してみるとよい。きっと仲良くなれるぞ?」
「そんなわけないでしょう!」
★ ☆ ★
機会はあった。
しかし、こちらから出向くのは不快だったので何度か呼び出しの書状を出したにも拘わらず梨の礫。
礼儀も知らない輩には恥をかかせるのも一つの手だろうと、彼の得意とするという演奏の場で勝ち上には上がいると鼻を明かすつもりであった。
「お主が公家の恥と呼ばれる男か。御門に気に入られているといえあまり調子に乗るな」
「なんで高位の家の連中ばかり集められた場に下位の俺も呼ばれたの?帰っていい?どう思う偉そうな人?え?帰っていいって?それじゃ帰ります」
「私はまだ何も言ってないわ!本当に帰ろうとするな!」
「いやなんか知らんけど演奏が聴きたいっていうから多少は迷惑かけた詫びに演奏するのもやぶさかじゃないとは思っていたんだぜ?なのに来てみれば演奏大会とか騙されたとしか思えねーよ。ちゅーか騙されてるだろコレ。ところでお前誰?」
「私は山科の」
「お前俺を騙したおっさんの息子か!お前の父親なんなの?ちょくちょく俺を騙してこき使おうとしてくるんだけど!?この前も酒飲みに来たとか言いながらいろんな酒作らそうとしてきやがったし!詫びとか言いながらどっかの大名がいる寺だったりさあ!?」
「…それは済まんかった」
「ホント反省しろよな。じゃ!」
「待て。帰ろうとするな。これからお主の順番だぞ」
「…代打お前」
「意味が分からんがお主の前に演奏するのが私だ。お主よりも上だという所を見せてやろう」
「そんな倒されそうな台詞止めてくれない?いやだよドロドロの朝廷物語に関わるの!?」
★ ☆ ★
「ねえなんでこっち睨んでるんだ?いや俺の方が評価高かったけど。だからやめてくんない!?俺悪くないよねこれ!?」
負けた。
自信はあった。才能はあったし練習もしていた。しかし、上には上がいた。
才能は恐らく凡人だ。しかし聞いたこともない曲調は粗削りながらも努力の跡が垣間見えた。新たな曲を彼は作った、いや知っていたのだろう。
噂では様々な人物、御門から賭場の破落戸まで知り合っているという。そこで得た知識なのだろうか。拾い上げられなかった奇石を価値あるものにしたのだ。
「え、もしかして泣いてる?謝るからさ?まさか尺八アレンジがあんなに評価されるとは思わなかったんだって。むしろ評価されたのがおかしいから」
「煽ってるのか貴様!覚えてろ!?次こそは勝つ!」
「え?次あんの?あっても出ないよ?」
「五月蠅い!次は正々堂々私が勝つ!」
★ ☆ ★
次に勝負を挑んだ場は歌合せだった。
判定にはどっちの味方でもない大人を用意し、万全の態勢で迎えたはずだった。
「お主驚くほど弱いな…」
「歌合せとかわかるわけねーだろ!何だよ風情が足りないって!風情とかそんな煙みてーなのわかるか!」
「まず川の流れのように流れる雲の様子がな」
「解説しなくていいよ。理解できないし、したくもないから。頭痛くなるからほらギンギンしてる」
「わかるわけなかろう。それよりこれより先、教養がないと苦労するぞ。教えてやるから勉強せい」
「母様みたいなこと言わないでくれる!?ゲロゲロ鳴き声に聞こえてきて眠たくなるわ」
「ゲロゲロ!?貴様には礼儀も含めてきっちり叩き込んでやる!」
「蛙君が怒った!?」
「誰が蛙だ!」
★ ☆ ★
思い返してみると碌な思い出がないな…。しかし
「何余裕こいてるんだ!次は蛙と猫の勝負だぞ」
「負け蛙と負け猫の看板の用意してるんじゃあない」
悪くないものだとは思う。
兎「最後面倒になってぶん投げただろ」
飛「はい」
兎「はいじゃないが」
意訳返信コーナー
『この時代に醤油は入手困難だぞ?パンとかも歴史改変か?』
飛「何度か描写してたと思いますが唐突に出てくるのは大体バカが現代の曖昧な知識情報で作ったそれっぽい何かです。作り方の確立してそれで上がりを得てます」
兎「それっぽい何かって…」
飛「流石に現代のモノとは思いっきり違うと思うし。ジャンプ主人公クラスの記憶力とかで技術チートとかしたくないし」
兎「そうか」
『日記は省略しすぎ真実を教えろ下さい』
飛「ごめんなさい無理」
兎「おい」
飛「設定語ってもいいけど、それやると日記の抜粋っていうこの細かい部分を勝手に想像させるスタイルがぶっ壊れるんですよね。そして今までのすべてを書き直ししたくなる」
兎「おめーの都合じゃねーか」
飛「そして細かい設定は絶対にそんなの無理だろって突っ込まれる」
兎「そっちが本音だろ。例えば賭場とか」
飛「最初に入場料と木札(金額に対応)に代えて無くなったら強制退場」
兎「別におかしくないような?」
飛「それだと金持ってなさそうな兎はどう入ったんだろうと」
兎「そこで金払ってること考えないのか?」
飛「!?」




