猫の独白
なんだこれ?
本当にこの生き物は面白い。
「おい将軍飲んでるか?ちゃんと飲めよ?」「おいそれ醤油入れたの見え」「飲めないのー?」「飲めるか!?」「おいおいこんなにもおい――マッズ!?なにこれ!?」「お主酔っておるな?」「飲んでないからよっれまへん」「おい、こいつつまみ出せ」
当然のように宴会に酒を持って乱入したかと思えば、征夷大将軍にあの態度。幕府の人間もまたあいつかと呆れられてる程度にはいつの間にか馴染んでいる。
「おい、なんだあの子供は?」「試合を賭けにしてた奴だろ?」「いやこの前六角と並んで観戦してたとか」「では六角の子息か?」「いやあいつは朝廷の悪童だ」「兎の君として朝廷で悪さしてる奴だと」「なんであいつ将軍にあの態度取って誰も咎めないんだ?」
阿呆をしている分目立ち、その分噂される。その噂を切っ掛けとして大名やその代官同士の話が始まり、魑魅魍魎の化かし合いが始まってるようだ。
兎をしばきに行ってる蛙も目立っているが、ただの子供がいるはずがないとこちらも十分目立っている。
さてさて、どうしたものかと思案すれば、やらしい視線が突き刺さるのをいやでも自覚する。
慣れたものだが鬱陶しいものだ、顔と名前は覚えているから将来的に利用し尽くしてやろう。
「うまく将軍を動かしたな。『天下一武道会』とか俺みたいなのを見つけるためか?」
「誰です君?」
「今は島津家の子分をやってる渡ってもんだ。お前だろ?朝廷にも幕府にも影響力のある本来とは違うイレギュラーさんよ。黒幕やってて楽しいか?」
……何言ってるんだろうこの人は?
酔ってるにしては意識はしっかりしてるみたいだし、何やら確信を持って同類と決めつけているようだ。
が、この妙な感じがする人間を何人か知ってるのも事実。
つまり現世にいながら異質の価値観と知識を持つ兎の同類であろう。しかし、あいつほど面白いわけでもなさそうだ。野心が大きいのか不愉快さしか感じない。
「黒幕が何かは知りませんが『天下一武道会』とやらを将軍に吹き込んだのはあそこで逆さ吊りにされてる阿呆ですよ」
「は?え?」
「君、見る目がないですね」
予想外だったのか呆ける阿呆をほっといて、逆さ吊りの阿呆の下へ向かう。
筆でのくすぐりに弱かったな?
飛「蛙も猫も変な知識ばっかり増えてるって回でした」
兎「それで済ませていいのかこれ?」




