ニート卒業
天使観測装置・宝珠が故障して二週間。大天使降臨に恐れながらも人々はいつも通り過ごしていた。
「るんるんですね!青い空白い雲!そして隣には可愛い後輩の空彩ちゃん!」
「う、うん……。そ、そうかな?」
曇り空に地上からでは全く見えない太陽。何処か人を拒んでいるように吹き荒れる風。はっきり言ってお出かけ日和ではないだろう。
今にも降り出しそうな、絵に描いた悪天候だった。
「ほんっとに最ッ悪。折角の荷物持ちのいる買い物なのに。こんなに天気が悪かったら全然楽しくない~」
侑咲は最初からずっとこの調子ででかい愚痴を言い散らしている。
三週間ぶりの休日。と言っても新人の空彩以外の四人は二週間、仕事せずにだらけていたから三週間ぶりと言ってもいいのかは分からないが……。
今日はそんなニート寸前の四人と空彩を含めた五人組で、外へと買い物に出かけていた。
「まあまあ、折角みんなで遊びに来たんだからそう言わずにね?」
「未那の言うとおりだぜ? あんまし文句言ってると茜からも愛想尽かされるぞ」
「光くーん? それどういうことかなぁ?」
その言い方だと茜以外からは既に見限られている事になるのだが。言った本人の光を含め未那もさほど気にしていない様子で笑っている。
そして話に上がった茜はというと。
「別にいつもの事だから。気にしてたら体がいくつあっても足りないよって。何で俺に聞くんだよ!」
「え?茜って侑咲の事大好きだろ?」
「うぐぐぐ。しっかりとバレてるのは何故なんだ……」
「ちょっと待って下さい!? 先輩って侑咲先輩の事が好きなんですか、初耳ですよ! 先輩は私一筋だって言ってたのに酷いです!」
あることないことを言われ空彩は嘘泣きまでする始末。この場が空彩中心に荒れたのは言うまでもないだろう。
そんな時、茜たちの頭上。超高層デーパートの屋上だろうか、その辺りから落下する人の影が――。
「一回何処かで休憩しな――」
両手の荷物が重くて疲れを感じたので、休憩を所望しようと後ろを歩く侑咲に振り返ったその目の前に。
「人……?」
茜たち五人組の中心に、血だらけの人が落下した。
「ちょ、この服セヴィアの戦闘員服着てるじゃない!」
「マジか! ……この紋章は第五部隊の剣マーク」
その落下してきた人間の体には余りに無惨な切り口が多数あり、落下している時は既に死んでいただろう。決してコンクリートに頭を打撃した衝撃が死因ではない。
つまり、明確な殺意を持って殺した相手が上空にいる。
「おい!大丈夫かって、死んでるか……。上、姿は見えない。雲の上だ! 対象は恐らく天使! 侑咲は地上の人達に天使が近づかないか見張り頼む、光と未那n二人は俺と一緒に雲の上へ! ……すごくない!? 隊長っぽいでしょ!?」
「それがなければね! ――――了解隊長!」
実は暇な一週間、こっそりと隊長っぽい練習をしてたのは内緒だ。
「先輩、私はどうすればいいですか?」
「え~っと。そういうのは佐野村さんに聞いてほしいけど……そこの死体を頼む」
「それだけですか!?」
「む、じゃあついでに本部への連絡を。一応ね! この荷物も頼むわ」
「え、ちょっせんぱ」
茜は両手の荷物を空彩に渡し上空へ飛翔。空彩は腕一杯に預けられた荷物に手間どい、意識が荷物へ移る。
いち早く雲の上へと到達した茜は急いで周りに目をやる。
「眩しっ。天使はどこだ!?」
突然太陽の下へと出たので、少し眩しさを感じて視界が狭まる。
「人間確認」
その所為で攻撃への対処が一歩遅れる。
「――ッ! ……あっぶねぇ」
「失敗。再度――」
攻撃を外した天使は再度剣を振りかざす。
「バカか。二度目はない」
天使がもう一度剣を振り上げたが振り下ろさせる筈がない、右手に剣を生じさせ天使を斬り殺す。
「茜大丈夫か!」
後に続き、光と未那も上空へとやってくる。
「ああ。だけど……第五部隊か。生存、いや姿が見当たらないと言った方がいいのか……。落下してく奴は見なかったよな?」
「うん。私たちがここに向かってる時も見なかった。別の場所に行ってるのかそれとも、もう……」
「その話は後だ。今はこのハエの様に群がってくる天使を駆除しねえとな!」
見渡す限りの天使一色。三人は互いに背中を預け迫り来る天使を叩き落としにかかる。
「無尽蔵の太刀ッ!!」
無閃の光が一瞬で天使を連続で切り刻む。最大出力で放ったその無数連撃は雲の隙間から光を差す太陽光のようだ。
だが、それでも殺せたのは全体の三分の一二も満たなかった。
「どんだけ居るんだよ。くそ、もっかいだ!」
もう一度、魔力を剣に巡らせ――
「――渦巻く旋風は回帰せし」
竜巻。分厚い雲をひと突きするように巨大な竜巻が発生。その突風で太陽の光を閉ざしていた雲に大きな風穴がぽっかりと空いた。
そして、天使諸共竜巻は茜たちを呑み込み地上へと巻き戻される。
「ど、どうなってんだぁ!?」
「異常気象か!? タイミング良すぎだろ!」
「異常気象。ではないよ。これはボクが齎した奇跡だ」
風が吹き荒れる竜巻の中、どちらが上なのかわからなくなっていた時その男の声が聞こえた。風の音が耳を支配している筈なのだが、その声を聞き漏らすことはなかった。
「だれ!?」
「誰か、そうさね。ボクは風。人類に恵みを授ける風さぁ。正し、君たちには病魔を振りまく魔風となろう」
男は両腕を広げそう言い、暴風吹き荒れる中一切髪が乱れる事はなく忽然と姿を現した。
明後日に続きが投稿されます。