表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

序章 新生天襲械都エクセクラ 1




 


 そよ風が肌を撫でるように優しく吹き、ビルの光が夜の地上を照らす。超高層ビル群が建ち並ぶ中を糸を縫うように高速道路が伸びている。

 それを見下ろせる位置に、超高層ビル群より一つだけ飛び抜けているビルの屋上に一人の青年が立っていた。

 蒼色の髪に蒼色の瞳。白と黒を基調とした、服を着ており腰には一本の剣。


「降臨まで、あと十秒」 


 左耳に装着しているイヤホンマイクに喋りかける。


「五……四……三。出ます!」 


 青年は屋上を走りだし、上空に向かってジャンプ……!

 すると、何もない空間から突然無数の何かが発生した。


「天使、確認しました。戦闘を開始します!」


 真っ逆さまに落下する青年が腰の剣に手をやり抜刀、そして。


「――救世蒼光(セイバー・レイ)


 青年の足が蒼く光り出し、飛翔開始。

 自由に空を飛び回る鳥のように、空中を移動する。目標は地上を攻めようとする天使。その誰もが服を着ておらず、裸。恐らく下位の天使だろう。

 その中の一人が迫り来る青年に気づくと、その周りの天使達も次々と青年に狙いを定めるように手の平を向け、光の玉を生み出す。


「対象、発見。攻撃開始」


 リーダー格であろう天使の一言で、一斉に攻撃を仕掛ける。


「よっ」


 青年は光の玉を躱しながらビルの間を飛翔し、当たらなかった玉は空中で爆散する。


「当たらないよっと! ほらほらっ」


 青年は自由自在に飛び回り、余裕の表情を浮かべており、このままじゃ殺せないと思った天使達は次のアクションを起こす。


「接近します」


 剣を生み出し、全員が青年に猛スピードで襲いかかる。


「えっ? まじ?」


 その攻撃は躱しきれるものではなかった。

 夥しい、数え切れない斬撃が青年の身体をズタズタに切り刻……まない!


 青年は針に糸を通すように隙間をかいくぐり斬撃を躱し、躱しきれない斬撃は己の持つ剣で捌ききる。

 繰り返される絶え間のない斬撃の嵐を無傷で生還した青年は、体勢を立て直す必要もなく速攻で攻撃に転じた。


「多勢にはこれか……。無尽蔵の太刀(エターナル・レイド)――!」


 そう詠唱した瞬間、持っていた剣が光り輝きその光が無数の剣となり宙を舞い、目の前に群がる天使を貫き斬り伏せる。

 そして、天使は次々と消滅していき、リーダー格の天使だけが残った。


「あれ?躱せたのか……。じゃあ、やっと一騎打ちだ!来い」


 残った天使はもう一本の剣を生み出し、二刀流になる。


「制裁……する!」

「二刀使いか、面白い」


 両者は互いに高速で迫り合う。間合いに入った瞬間、二人は剣を振りぶつかり合う。天使はもう一本の剣を青年に向けて振るが、難なく躱されカウンターを受ける。

 一本が二本の剣の攻撃量に敵うはずもなく、大半を防御にまわされるが攻撃できるタイミングを見逃さない。


「は――ッ!」


 青年の脳天に向かって振った剣を二本使って天使は受け止め、力比べが始まる。

 だが、徐々に押され剣が跳ね返されそうだ。


「さすが天使様……! 力がお強い。でも……!」


 青年は再度力を込め押し切り、体勢の崩れた天使に追撃を加える。剣を心臓に向けて槍のように貫こうとするが、寸前で躱され背中ががら空きに。


「執行!」

「なんの!」


 咄嗟に振り返り剣を横に一閃。剣を弾かれた天使は大きく仰け反り、このチャンスを逃さない。

 光速で繰り出す。


「穿て、蒼の剣槍――。貫穿する絶光(サフィア・シャフト)ッ――!」


 再度、剣を横に振ると槍のようなレーザーが発射され天使に直撃する……!

 放たれた蒼の光線は止まることなくビルに衝突し、爆発を起こす。


 だが、心配しないで貰いたい。ビルを含め全ての建物の表面には高密度バリアが張られているので、今の攻撃程度じゃビクともしないのだ。

 青年はそれを見届け、イヤホンマイクで仲間と通信をとる。


「よし、任務完了しました。即刻――」

「何言ってんのバカッ!」

「うわっ!?」


 さっきまで全然喋らなかったマイク越しの女性が、突然大声で叫び鼓膜が破れそうになる。


「まだ反応は消えてないし。てか、あんた見えなかったの!?あの剣で防御してたわ!」


 まさか、その一瞬が見えていたのだろうか。


「もーうるさい……。だけど、それは事実のようだな。全く……型落ちの目とじゃ比べものにならないなぁ。神眼は――ッ!」


 爆発の煙を突き抜け、天使が接近する。


「ウリエル様の名の下に。決断せよ、仮・(フォルス・)天使の炎(ジャッジメント)!」


 天使の持つ二刀が刃、柄の両方から炎が発生し――青年を斬り、燃やす。


「チッ!ちょっと頼むわ、侑咲(ありさ)!」

「待ってたわよぉ! ……喰らえ、雑魚天使!」


 マイク越しの侑咲と呼ばれる女性が暴言を吐いた後、何かが発射される。

 それはビルの間をすり抜け確実にヒットする魔弾。


「直撃ぃ!」


 魔弾は炎斬を繰り返す天使に当たり、左腕を吹き飛ばし血が噴き出す。


「ナイス」


 左腕を失った天使に最後の一刀。縦一直線に振り下ろした。

 真っ二つに裂かれた天使は活動を停止し、消滅。青年は天使の血を剣を振って払い、納刀した。


「ふう。今度こそ任務完了。サポートありがとうございます」

「いいって事よ。まぁもっと倒したいけど。……それよりあんた慢心しすぎじゃない? 相手を舐めすぎよ。もっと真剣に戦いなさいっ」

「あっ?え、ごめん……。でも侑咲が援護してくれるから大丈夫かなって」

「ふ~ん。まあ私は頼りになるしいっか」


 彼女の扱いはわかっている。怒ったら取り敢えず謝って、おだてればいいのだ。だが、その言葉に嘘偽りはない。

 めちゃくちゃ頼れるし、謝らなきゃいけない事もあるしね。言わないけど……。


「ちょろくて助かります」

「ん?何か言った? さっさと帰ってきなさいな。――って思ったけど……残業みたいね」


 青年の目の前に急速に光が集まってくる。それは徐々に人の形となり、白く大きな翼が現世に姿を見せる。


「書類の整理は任せて、明日の会議の準備しといてね」

「なに言ってんのよ。くるわよっ」


 現世に降り立った天使は先ほどの天使たちとは明確に違う箇所がある。

 それは服を着ていることだ。


「ふんっ。夜の風は肌寒いってか? ご立派に服着やがって。女の子なら裸でお願いしますよ」


 その女性の姿をした天使は純白の布で身を包み、金髪の髪を夜風になびかせている。


「私は天使。貴方方に救世を齎す者。即ち、希望。なので、絶望を排除する義務がある。私は義務を果たす為、貴方を殺します」


 そう言い終わると天使は一瞬にして消えた。消滅したのではないし逃げたわけでもない、余りの速さにそう感じただけだ。


「後ろ!」

「わかってるっ!」


 後ろに移動した天使は持った槍を心臓に向かって突く。その突きの軌道を剣で逸らすが、槍を回して石突での攻撃。だが、石突が身体に当たる前に剣で押さえ込む。そのまま振り払い天使の懐に飛び込む。


「これはどうだ!?」


 下から上に向かって剣を振る。天使は紙一重で躱すが斬波で少しばかり金色の髪の先が切れる。

 青年は今がら空きだ。剣を振りとすというのは間に合わない。槍が再び横に振られる。

 迫り来る槍の穂先だが、体を一回転させ躱し天使の頭上を取る。


貫穿する絶光(サフィア・シャフト)ッ!!!」


 体を一回転させた事により勢いが増す。蒼い光線が天使を巻き込みビルに直撃。


「まだ生きてるわよっ!」


 侑咲が生存報告をするが今回ばかりは流石にわかる。今のでは死なない。多分かすり傷がついてるかついてないかだが……。


「う~ん。思ったよりダメージ入ってないなぁ」


 天使は無傷の生還。そして、青年が瞬きをした瞬間、天使は目の前に移動しており後は心臓を突くため、穂先を前に出すのみ。


「だから、さっさと仕留めなさいッ!」


 魔弾は発射している。槍ではなく今度は天使の脳幹を狙った。先に辿り着くのは魔弾だ。天使がこのまま攻撃を続けるのなら先に魔弾が当たり、槍が青年の心臓を穿つ前に動きが止まるだろう。

 それに今からガードしたところで間に合うはずが――――ッ!?


「嘘!? マジィ!?」


 大凡人の技ではない。まぁ人ではないから当たり前なのだが。


「それにしても、今までと違うわよ!茜、もうやっちゃいなさい!」

「了解!」


 青年はいや、茜は下から剣を振り上げ、天使は魔弾を弾いた体勢から槍を振り下ろし――衝突。


「え、いや。これ。悪い」


 槍は振り切れ、茜は衝撃で地上に猛スピードで落下した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ