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世界を跨いだ夫婦
それが銃声なのはすぐにわかった。
恐らく英世だろう。
命を預かる仕事だ。勘違いでしたじゃ済まされない事はわかっていた。
世界は星の数ほどある。もう彼と巡り会う事も無いだろう。いつだって失って初めて気づくものだ。あの時の幸せはもう戻ってこないと。
「すまねえばあさん。もっと早く気づけてれば…」
キジが流暢に喋りながら屋内に入ってきた。しかしこの驚きも、今や遠い思い出の内。
「いいんだよ。それより漱石探しておいで。あの子だけは助けてやって。」
再び静かな時が流れ始める。
私にはもう、ただ受け入れる他に術はなかった。