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キジからの言葉
「ちょっと、無視しないでおくれよ」
「…おーい。あれ?おーい。」
何なんださっきから。こっちはおじいさんの事でいっぱいいっぱいなんだ。どこを見ても人っ子一人いやしないのに何かが話しかけてくる。バサバサと羽ばたく音もする。ん?バサバサ?
ふと振り向くと、眼前に大きなキジが現れた。
「やっと気づいたか。鬼に会いたいんだろ?会わせてやるよ。」
なんという事だ。声の主はキジだったのだ。なぜ喋れるのだろうか。そもそもその固い嘴からどうやって言葉を発しているのだろうか。謎だらけだ。
「君は?」
「ああ、あんたのおじさんの知りあいでな。全部見てたぜ。」
全部。四角い箱に乗った辺りからだろうか。
「おじさんから言われてたのさ。自分にもしもの事があったら代わりに守ってやってくれないかってな。」
「ありがとうございます。」
「おう。礼儀の正しい子は好きだぜ。ただ1つ忠告だ。」
「忠告?」
「この世界の人に助けを求めるな。いいな。」
下っていった森を、今度は別方向に上り始めた。