2/8
おじいさんからの言葉
「すまんな、坊。」
四角い箱を穴の空いた円盤で操るおじいさんは、前触れもなく僕に謝り始めた。
「仕事でのう。世界に適合出来なかった若者を別の世界に送ってるんじゃ。」
「だが坊は違った。あの世界でもしっかり愛されていた。勝手に引き離してすまなかった。」
「坊。おまえにはわしがなにを言っているのかはわからんだろう。だが何も気にする必要はない。」
「愛する母の元に帰してやる。」
尚も唸りをあげる動く箱は、川から三里程離れた森の中で息を止めた。
目の前には夜を纏ったかのような黒い人の群れがあった。
群れは全て、何かをおじいさんの額に向けている。
群れの男「溝口さん。その子にいったい何をするつもりですか?」
空気が沈む。昼食を嗜むリスも、宿に向かう蟻も息を呑む。
おじいさん「坊。鬼に会え。彼らなら_」
表現が難しい。強いて言えば薪が割れたような、しかし薪というにはあまりにも大きな音が森を包んだ。
おじいさんは頭から赤い雨を降らし、その場に倒れた。