1-10 瞬殺
少し遅れてしまいました・・・
「お前の言い分はわかった。だがその前に片づけないといけない案件ができた。続きはその後だ」
ルクスは話を途中で切り、反応のあったほうへと意識を向ける。するとその方向から図体のでかい男がでてきた。男は斧を持っており、回りの子分どもは弓や剣を持っていた。弓を一気に放たれると危険なので馬車のほうに【防御魔法『シード』】をかけておいた。
魔法がかかったのを確認すると横、後ろから包囲されていた。
「おいおい!なんてこったぁ、同胞が捕まってるぜぇ!おまえらぁ!!!あいつらを殺して救い出せ!」
山賊のお頭のような人物が声を上げると周りの奴らもその声に合わせて叫びながら突っ込んできた。
この時ルクスは後悔していた。途中で武器を買っておくのを忘れていたのだ。剣は訓練用の物を持っているだけでまともに切ることができなかったのだ。
「ちっ・・・後悔しても同じか。なら奪うまでだ!」
ルクスは剣を持っている山賊へ向かって走り出した。
回りには弓を持っている奴らもいたが無視をして走った。山賊の弓の腕前は止まっているものには当てられる程度なのだ。流れ弾にだけ注意をしておけば造作も無かった。剣を構えた山賊の目の前にたどり着き【スプリー】をかけた。山賊は一気に脱力し、倒れた。落とした剣を拾い周りの山賊から一気に倒していく。
弓を放つ奴らがいるせいで近衛兵は攻めることができないため、雑魚から殲滅していくスタイルで戦い始める。唯一助かったのが山賊に魔法を使う奴がいなかったことだろう。
ルクスは後方から側面へと回りながら頭のいるところへと向かう。相手もわかっているからかルクスを待ち構えるように構えながら待っていた。
ルクスが山賊の前へとたどり着き、対面したときには山賊の数も減り近衛兵が交戦へと持ち込んでいた。
「やっとたどり着いたか。お前を倒さねぇとお姫様はいただけなさそうだから待っていたのによぉ」
頭は笑いながらも真剣な目で睨みをきかせる。
ルクスはその目をしっかり見ながら剣を構える。
「そりゃ優先は護衛だからな。お前が突っ込んでいたら近衛兵と一緒に倒してやったんだがな」
山賊の子分どもはかなり弱かった。集中せずとも倒せるくらいに。しかし、この男だけは最善の戦い方を考えていた。戦いなれているとルクスは直感で理解した。
暴れるだけと戦いは大きな違いがあると知っているからだ。
「ほんじゃまぁ、他のやつらが来る前にかたずけさせてもらうぜ」
頭は斧を振り上げながら突っ込んできた。ルクスの頭めがけて振り下ろされたが横へと飛びかわす。
「その程度で避けられると思ってんのか!」
振り下ろし、小さなクレーターを作る。その勢いを殺さず横なぎに振り回した。ルクスは着地してすぐだったので剣で受けとめるが、その力に吹き飛ばされる。受ける瞬間に後ろへ飛び威力を殺したが、相手の力が強すぎた。剣が折れてしまったのだ。
「ちっ、馬鹿力め」
剣を捨て、別の山賊が落としたであろう剣を拾う。だが同じ剣なので受けとめればまた折れてしまう。ルクスは悩んだ。
魔法を使うか。
しかし、剣の道を究めようとしているのにすぐに魔法に頼るのは剣士として負けたことになると考え、魔法を使わずにかつ方法を探し始めた。
「いい武器は見つかったかよ?まぁ、どんな武器でも一緒だけどなぁ!!!」
男は再び斧を振り上げながら向かってきた。ルクスは振り下ろされた斧を剣で受け流す。そして隙ができたところで剣を振りぬく。
「ふっ!・・・くそ。ダメか・・・」
振りぬいたが切ることができなかったのだ。剣は刃こぼれをしていた。兵士と打ち合いをしたか、斧を受け流したときにこぼれたのか・・・どちらなのかはわからないがとても切れるような状態ではなかったのだ。
「あぶねぇあぶねぇ。もう少しでやられるとことだったぜ。だが武器の質がついてきてねぇようだな。残念だがお前に勝ち目は無いようだな」
男の話にルクスは少なくとも同意してしまった。今のままでは勝てない。そう思ってしまった。父の言っていた『切れない剣で切る』という修行にはしっかりと意味があった。ルクスは今更ながら無理だと決め付けていたことに後悔した。
「これは・・・修行のやり直しだな・・・」
そう呟いたルクスに男は口角を吊り上げながら笑った。
「お前が修行をやり直す時間なんて無いぞ?何故なら今ここで俺に殺されるんだからよおぉ!」
男は斧を振り上げながら突っ込んできた。ルクスは斧を受け流して距離を取るが男はすぐに距離を詰めて襲い掛かってくる。ギリギリでかわしながら打開策を考えるが魔法での迎撃しか思いつかなかった。今はディナにテアがいる。そちらを優先しようと魔法を使おうとしたら足元に剣が2本落ちていた。
それを見たルクスは魔法をキャンセルし剣を2本取り構えた。
1本でダメなら2本で戦えばいい。幸いこの2本はきれいなままだったので何とかなりそうだとルクスは攻め方を考えた。一撃で決める方法が一番確立が高い。それしかないと決め、ルクスから攻めに入った。
「はっ!2本持ったところで何もかわんねぇよ!おらぁ!」
突っ込んで行くルクスに斧を振り下ろす。ルクスは左手に持った剣で受け流し、右手で持った剣で開いた脇の下から反対の肩にめがけて剣を突き刺す。突っ込んだ勢いのまま突き刺し、前へと飛んだ。その勢いで突き刺した剣は根元から折れ、斧を受けとめた剣はかけていたが、折れた刃の部分は相手に突き刺さったままだった。
男の心臓に突き刺さっていたようで、そのまま倒れた。
「ふぅ・・・賭けだったが一番いい結果になったな」
一撃で倒せればラッキー。倒せなくても行動不能にするために脇下から突き刺すのを狙ったのだ。
周りを見渡せば兵士たちも子分たちを倒し終わっていた。馬車の中から見ていたのか戦いが終わってすぐテアが降りてきた。
「皆さん。お疲れ様です。怪我をしている方はこちらへ。すぐに回復をしますので。軽症の方は傷薬をお渡しします」
テアは深い傷を負っている兵士に回復魔法をかけていった。完全に傷は治らないが出血は引いていった。
「さすがお母様です。回復魔法は難しいですからね。私では傷を消すのが精一杯で出血を止めることはできませんから」
いつの間にかルクスの隣に来ていたディナが賞賛した。
「ディナ。馬車に戻るかテアさんの隣にいろ。まだ終わっては無いからな」
そう言うと捕らえていた男の下へと向かい話の続きをした。
「お前も被害者だってことがわかったが、山賊業をしていたことに変わりは無い。罪は罪だ。だが事情もわかる。なので取引をしてやる。もうすぐお前らの雇い主がここへ来る。そいつは殺さずに捕らえる。その手伝いをしろ。きちんとこなせれば不問にしてもらうように王妃に言っておいてやる。どうする?」
男はその言葉に頷いた。
「なんだあの男は・・・一団を壊滅させやがったぞ・・・どうする・・・」
アンダルシアンは戦いに介入しようとした頃にはお頭の男がやられた時だったのだ。出遅れてしまい、どうやって登場するべきかを考えていた。
「アンさん。悪いが降りさせてもらうぜ。お頭もやられてうちもおしまいだ。悪いが俺も捕まりたくねぇんだ」
アンダルシアンについていた山賊が離れようとしたとき、後ろから首をはねた。
「この首を持っていけば自然と山賊を追いかけてきたってことにできる。そうすれば俺も一役買ったってことになる。この作戦ならまだ助かる」
切り落とした首を持って不気味に笑うアンダルシアン。もうすでに助かる道は無いとは知らずに。
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ルクス「修行ちゃんとしておけばよかった。」
ディナ「え?ルクスは十分強いじゃないですか?」
ルクス「魔法を使えばな。でも目指しているのは剣士だ。だからまだまだなんだよ。」
テア 「そのようなことをせずとも剣士としての腕は一流ですよ」
ディナ「ですよね!むしろ剣が無いなら魔法で作って剣士として打ち合えば負けませんよ!」
ルクス「魔法の使えない状況になったら?剣がなくなるぞ?」
ディナ「お母様。ルクスが意固地になっています。反抗期です」
テア 「まぁまぁ。反抗期なんて可愛いわね」
ルクス「反抗期とかじゃなくただ譲れないだけなんですよ」
テア&ディナ「反抗期を自覚して無いだけ」
ルクス「・・・もうなんでもいいよ」
そろそろ登場させたいが、物語が進まない。