プロローグ『闇夜の二人』
「おつかれー」
「おう、おつかれ」
「お疲れ様です」
肩の荷が降りるのはいつもその時である。部活の後、静まり返った部室でーー彼らにはとある習慣があった。
部室の外には、ただ暗闇が広がっているばかりである。先輩らしき少年が吐息を漏らして言った。
「疲れたなぁ……やんなっちゃう」
「まあまあ、このために部活をやっているようなもんですから、お互い頑張りましょうよ」
後輩と思わしき少年が応えた。腰を低くして喋ってはいるが、実際の距離感はそれよりもはるかに近いように見える。
「じゃあ……始めると、するかな」
少年は重い腰を上げながら言った。
「そうしましょう」
鈴の音色のような声がただ二人の空間に響く。それは少年の心を波立たせた。少年の鼻息は既に荒く、じっとしていられないようであった。
「全く……困った人なんですから」
それに比べると、少年の心持ちは幾分冷静である。
「まあ、じれったいのは僕も一緒ですけど」
今から、二人きりのバラ色の世界が暗闇の部室で繰り広げられるーーはずだった。
そうーー【二人きり】で。
読んで下さった方ありがとうございます。作品説明でも書きましたが、小説投稿は初めてですので、拙いところは多いと思いますが、これからも頑張っていきたいと思いますので、応援していただけると光栄です。