第9話 エリカの意見
天秤編 エリカの意見
俺たちは中央研究所に車で向かっている。アビスの話しはエルの下りは頭に入れておくだけで信じてるわけではない。あいつが手を引くというのは嘘だろう。声が愉快そうだった。
「黒龍。アビスの話をどう思う?」
「奴は信じてはいけない。それに天津星という男。あれは俺と同等だ。決して戦うな」
天津星か。たしかに他のやつと雰囲気が違うし何より向こう側の人間なのだろう。俺は黒龍と模擬戦をしたことがあるが一回も勝ってないし一撃も食らわせてない。そんな化け物と戦うのは勘弁だ。
あの場でアビスを倒せたかって?無理だ。黒龍はアビスと相対した時に動けなかったし俺も動けなかった。それに眼を見ないで戦うことの出来るのは黒龍ぐらいだろう。その本人はさっき勝てないと言っていた。俺の手も流石に見えないものは消せない。
10分後。俺たちは無事に中央研究所についた。境界点移動を使えばいいんじゃないかって?答えは無理だ。あれは中央研究所からの一方通行だ。
俺たちは会長の元にいった。
「失礼する」
黒龍はノックもしないで入った。彼はなんというか面倒なことを嫌うからな。
「帰ったか黒龍、神凪。報告を聞こう」
俺と黒龍はアビスと接触したこと、エルという者の話を始めた。
「つまり、エルとやらがこれらを引き起こしたのか?妨害された時は声しか聞いてないから姿はわからないが」
「おそらくアビスの証言からするとエルは中枢か地下のジオフロントに潜んでいる可能性がある。最も高い可能性は中枢だろうな」
「そうだな。地下のジオフロントを潰されても中枢は打撃を受ける。そう考えると中枢で間違えない。エルに関してはこちらで調べておく」
会長は少し手に力が入っている。父を殺したエルを少なからず恨んでるのか?俺にはわからなかった。
「さて、私の話は以上ですだが、君たちが回収した赤星について瑛里華が君たちを呼んでいる」
「わかりました。すぐに向かいます」
俺と黒龍は立ち上がって直ぐに第二研究室に向かった。
コンコン。二回ノックをすると部屋の中から「入れ」と聞こえて俺は扉を開く。
「適当に座ってくれ」
俺と黒龍は椅子に座る。彼女は俺たちの前の椅子に座った。
「君たちが回収してきた赤星と名乗る男は魔法因子を埋め込まれている。問題はその純度だ。一般的に埋め込まれてる魔法因子は30%に薄められている。これは30%を超えると人体に悪影響を及ぼすからだ。対してこの赤星に埋め込まれている魔法因子は70%だ。これは常人は発狂して死ぬ。おそらくこれを埋め込んだ奴は狂人だ」
あの場にいてそんなことができるのはアビスだと思う。瑛里華さんを超える技術者がそう簡単にはいない。それにそれを入れられて生きている赤星とやらも狂人だな。
「なるほど。ちなみに100%の魔法因子を入れるとどうなるんですか?」
あのアビスですら70%だというのだ。100%を入れたらどうなるのか?
「そうだな。100%いれれば人間そのものが魔法となる。魔法と融合する」
「なるほど」
恐ろしい話だ。魔法と融合なんて想像がつかない。俺は黒龍を見てみると対して驚いていない。まぁ、いつも何考えてるかわからないからな。
「話はこれで終わりですか?」
「そうだ。気をつけろよ。相手は狂人の類だ。まともに戦おうとするな」
「その忠告はもらっておこう」
黒龍がそう言って立ち上がった。俺もそれに続いて立ち上がり、一礼して部屋から出て行く。狂人か。言われなくても相対した時に気付いたさ。
黒龍は会長の研究室に、俺は事務所に戻る。




