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境界のアビス  作者: 棗喰う
天秤編
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第7話 取り戻せなかった物

天秤編 取り戻せなかった物


中央研究所の黒い廊下を渡って扉の前に着いた。扉をトントンとノックして開く。


「会長。なんのようでしょうか?」


俺は会長に呼ばれて研究室に赴いた。


「来たか神凪。まずは座ってくれ」


俺は側にあった椅子に座り、会長と向かい合った。


「今日呼んだのは反抗組織の情報が掴めたからだ。構成員の数は7名。アジトの場所は不明だが構成員の1人の情報は掴めた」


そう言って会長は資料を俺に渡してきた。俺は資料を貰って流し読みした。

名前は高坂 東野 20歳の男だ。見た目はチャラ男という感じだ。


「君にはこいつを捕らえて炙り出してほしい」


「わかった。稲月に頼んでみる。それで、彼はいつまでそこにいるんだ?」


俺はそう言って会長の後ろのカーテンを指差した。すると黒髪の男が出てきた。なぜか甲冑を見つけているが俺はそいつを知っている。フードの男こと黒龍だ。彼とはあの後、何度か会っており名前を聞いたら黒龍と呼んでくれとの事だ。


「掃除をしていたんだ。気にするな」


そう言って会長の隣に腰を下ろした。


「俺の話は以上だ。黒龍が話したいことがあるそうだ」


「あぁ。話したいことというのは反抗組織の裏にアビスがいるかもしれない。念のためアビスについて知っている情報を提示しよう。容姿は不明だ。あれが現れるときは不定形の時が多い。次に奴と会った時の注意点だ。

まず、まともに話をするな。精神をやられるぞ。次に目を見るな。奴の目は人を堕落させる。最後に奴には部下が6人いてそれとも相手をするな。以上だ」


ようするに姿も形もわからないのに見てはいけないし喋ってはならないと。これは厳しいな。


「わかった。会ったら逃げればいいのだろ?聞く限りでは無茶苦茶なやつだ」


「そうだ。戦おうと思うな。アジトが見つかったら俺も同行しよう」


「助かります」


俺は席を立って早速稲月に話をつけに行くことにした。会長はこの後にも仕事があるらしい。


俺は研究室からでて黒い廊下を歩く。

俺は1年前より冷静になった。それは俺たちに入っている神話因子のせいだと会長は言った。俺の中にあるのはアマテラス因子でほかの神話因子の一部の力の行使が出来るそうだ。例えばメイラの叢雲という刀とか宮代のスサノウという鎧だ。そしてこの神話因子の影響としては人体、あるいは精神の変質だそうだ。俺がここまで冷静いるのもコレのせいだ。おかげで目の前で人が死のうが突然、戦闘が起きようとも冷静でいられる。自覚はないが1年前より感情が希薄になったと言われた。変質は人によって変わるようでエシリアみたいに髪の色が青くなったり、会長みたいに感情が消えたりだ。


俺は事務所に帰ってきた。玄関をくぐり声を上げだ。


「稲月。探してもらいたい反応がある」


そう言って俺は会長から貰ってきた資料を彼女の前に並べる。稲月はそれらに手を置いて目をゆっくりと開いた。


彼女の因子はイザナミだそうだ。その効果は魔眼で今使ってもらってるのは千里眼だ。ある程度の情報があれは特定出来るそうだ。これは捜査に役に立つ。


『見つけた。東京の郊外にある廃屋に居ます』


「ご苦労。向こうの部屋で寝てる立川には俺が出かけることを起きたら伝えておいてくれ」


彼女はコクと小さく頷いた。俺は再び外にでる。天秤には実は裁判権もある。正確には裁判権を与えられてるのは立川の1人だけだが。彼の因子は閻魔だそうで人の罪を暴けるし捌けるのだ。これほどピッタリな力はない。


俺は車に乗って東京郊外に向かう。

車なんて使ってるのはお偉いさんだけだ。今では燃料の不足で一般には使われていない。いくらかの燃料は地下のジオフロントで作られているが、全員に配給できるほどではない。


この境界内ではお金は使えない。生活の支援は全て中枢が行っており子供は学校に通い18歳以上は国がから提示された仕事をしているのだ。例えば地下で燃料や食料を生産したり、多くは地下の工場で働いている。元々、地下にはジオフロントがあったために助かったのだ。


俺は車を止めて降りた。目的地にはまだ距離があるがここから先は車では進めなさそうだ。国が直したのはあくまで中心部であり、郊外は荒れたままだ。仕方ないので歩いて向かうとしよう。

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