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境界のアビス  作者: 棗喰う
序章
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第5話 境界開闢

第5話 境界開闢


警察署の中に入った。中は思ったよりも荒れていない。


「君!避難しに来たんだろ?さぁ、こっちに」


1人の警官が話しかけてきた。他に2人ほどいたが警備してるようだ。


「いえ、父を探しに来ました。名前は神凪 悠二です。それと、外での戦闘は既に終わってるようです」


警官は驚いた目をする。


「神凪さんの息子さんですか。神凪は救助活動に行ってるはずだ。それと、外での戦闘が終わったのは本当か?」


「えぇ。化け物は街には居ませんでした」


警備の1人がこちらに向かってきた。そして警官に耳元で話しかけている。


俺は耳を傾けて聞いてみることにした。


「(報告します!化け物の鎮圧に成功との事です!)」


2人の顔は明るくなっていた。そして警備の人はこの後、街の見回りに行くそうだ。


「ところで君はどうするんだい?神凪さんを待つのかい?」


「はい。そこの椅子に座って待っています」


警官は「そうか、わかった」と言って施設内に消えていく。俺は近くの椅子に座って父を待つことにした。


「お?」


椅子に座ったのと同時に街に電気が戻った。会長が上手くやったのだろう。

これで人々の恐怖も薄れるだろう。


事件が起きてからまだ4時間であるが、1日も経たずに終結するのはなかなか早いのではないだろうか。

日々の避難訓練や指示を出してる人の力だろう。なにより、フードの男の協力が一番の近道となった。


10分後。救助部隊が帰還してきた。

救助部隊の多くは負傷していたり、足を引きずっている。その中に父がいた。俺は急いで近づいていった。


「父さん!無事でよかった!」


「あぁ。お前も無事でよかった!」


俺は父と手を取り喜んだ。それも一瞬だ。俺は父から離れてこう言った。


「父さん。僕は家に戻ってみるよ。沙耶が帰ってきてるかもしれないから」


「そうか。なら、俺は沙耶の学校に向かってみるよ。終わったからってまだ油断するな。まだ、俺たちはこの意味わからないところに閉じ込められてるだけだからな」


そう、そうなのだ。今は喜んでいられるが本当に喜べる時はこの境界の狭間から戻れた時だ。


俺は父と別れてから家に向かった。現在、連絡手段は混乱のために使えない。人々が2020年の科学災害である程度冷静に行動できるようになったが、これは異常だ。


行動はスムーズだが恐怖の連鎖は断ち切れない。これに関しては国が動くと思う。


俺は父子家庭で生まれた。妹が生まれてから母は死んだと聞いている。父は己の正義を信じ警察官になった。職業上死ぬことがないと言い切れない。時代が進もうが犯罪は起こるのだ。


俺はある程度の覚悟はしていた。父も覚悟はしている。父が死んだら叔父の家に行くそうだ。叔父とは仲が良いのでそこは心配していない。


妹は俺と違って覚悟は出来てはいない。でも、俺は父を尊重する。あの人を信じているから。


俺は歩みを止めた。何故かって?道端に本が落ちていたからだ。

俺は本に近づいて取ろうとした。


「「え?」」


俺とその子は声を上げた。俺が取ろうと伸ばした手はもう1つの手と当たったのだ。俺は視線を上げるとそこには青い髪の少女がいた。右眼に眼帯をした少女。その瞳は宝石のように煌めき、その髪は海を飲み込む。


「えっと、君は1人なの?」


俺は声をかけた。周囲には人はいない。この子の親らしき人が。俺は迷子と判断した。


「ふぇ⁉︎え、えっと.......この本を拾いに.......」


少女は困ったような顔をするとそう言った。俺は気になってその本の題名を見た。だが、日本語でも英語でもない言葉で書かれていた。きっとこの子の母国語なんだろう。


「そうか」


俺はそう言って本を少女に渡した。


「大切なものなら大事にね?」


きっと、避難の時に抱えて逃げたが、落としてしまったのだろう。この本がよっぽど大事なんだろうな。


「あ、ありがとうございます!」


そう言うと少女は走って行ってしまった。


「転ばないようにねー」


俺は少女を見送った......



家に着いた。家は荒れていないが、ドアが開いていた。俺は妹が帰ってきたものと思い急いで入っていった。


「沙耶!無事か?」


玄関で靴を投げ、リビングのドアを開けた。そこには妹の姿はなかった。かわりにあったのは床に倒れた黒髪の女性だ。


「......え?」


思考が停止した。何故、知らない人が家で倒れているのだ?え?え?

俺はその人をソファーに寝かせた。生きていて呼吸もしており、熱はない。どうやら気絶してるのだろう。


「意味がわからない......」


思わず声が出てしまった。


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