第12話 休日を妨げる者
防衛編 休日を妨げる者
天秤の集会があってから5日後ぐらいのことである。今日は仕事はない。本当なら毎週働いても良いのだが、立川に「体を休めなきゃダメですよ!」と言われて土日はお休みさせてもらっている。
今日は土曜日。家にいても暇だから俺は会長の研究室で今後の打ち合わせをしている。
「今後の予定としてはエルの解明とアビスを抑えること。エルに関しては少人数で特定に当たる」
俺と黒龍は頷く。
「話も纏まったところで黒龍を借りていってよろしいでしょうか?」
「問題ない」
「ありがとうございます」
俺は黒龍を連れて研究室を出る。休日は黒龍に鍛えてもらう事が多い。因子を得て体が丈夫になろうが鍛錬を積まなければ特異個体やアビスの手下とやらに負ける。それと同時に因子というのは副作用がある。お手軽に力を使える代償だ。化け物や特異個体を倒せば倒すほど力は増して副作用も強くなる。その副作用は人によって異なるが、俺と会長は感情が薄れていく。
殺戮の奴らはその影響を受けまくっている。そのため放っておくと狂人が出来上がる。メイラや錦は精神力で耐えてるがそうできないやつもいる。そういった奴らは狂人になる前に因子を取り除かれている。だが、力は失っても副作用は消えない。因子とは諸刃の剣でもあるのだ。
俺と黒龍は研究所の地下にある第一演習場についた。いつも行っている訓練は剣の扱いや体の運び方などだ。何をやるかは黒龍か決める。黒龍の強さはアビスの次には強いと思っている。だが、黒龍は力をあまり使えないらしい。境界とは不安定な場所で黒龍の力で揺れてしまうらしい。だがら、俺たちに力を貸す事ができない。
「今日は剣の鍛錬をしよう。構えろ」
俺は言われた通りに擬装叢雲を作り出して構えた。黒龍がゆっくりと動く。俺は黒龍の体全体を捉えて距離を測る。詰められれば早すぎて対応できないからだ。
その時、黒龍が俺が見えるギリギリの速度で迫ってくる。ノーモションで加速するのは心臓に悪いのでやめてほしい。黒龍は正面から一太刀入れてくる。俺はそれを受け流す。まともに食らえばこの擬装叢雲であろうと折れる。黒龍は受け流された剣の軌道を一瞬で戻してくる。俺はその一撃を剣で受けて後ろに吹き飛んだ。
「う.......」
「大丈夫か?」
無愛想だが心配している。この一年で表情をだいぶ掴めた。
「あぁ。相変わらず無茶苦茶な強さだ」
「お前も一撃を受け流せるだけで充分成長した。昔は見えてすらいなかったからな」
昔はボコボコにされた。いまもあまり変わらないけど。
それから1時間鍛錬をした。
「今日は終わりにしよう」
「わかった」
俺はハンカチを取り出して汗を拭く。この俺はいつも動きやすい服を着ているから練習用の服に着替える必要がない。それに、境界は人工太陽があるにも関わらず寒い。街を行く人は基本的には厚着をしている。
汗を拭き終わった俺は地下第一演習場から出ようとしたその時。
『緊急事態発生。緊急事態発生。直ちに避難してください。繰り返します......」
それと同時に俺の通信用携帯が鳴った。
『地下ジオフロントが攻撃を受けています。すぐに向かってください』
第一演出所に居た人達は直ちに避難を始めた。
「神凪。俺は地上を警戒する。お前は地下に迎え!」
「わかった。そっちは任せる」
俺は急いで地下ジオフロントに向かうための階段に向かう。エレベーターは論外だ。襲撃を受けてるので途中で止まったりしたらおしまいだ。階段を駆け下りる。半分ぐらい降りたところで通信用携帯が鳴る。覗いてみると襲撃の詳細情報が送られてきてた。
『地下ジオフロント生産区に1人の襲撃者を確認。迎撃には宮代が向かっています』
生産区か。ここの階段を降りてすぐの場所だ。
ドーン!
下の方から爆発音が聞こえる。階段にいた俺は揺れを感じて立ち止まった。
「どうやら始まったみたいだな」
急ごう。俺は再び階段を下り始めた。
「はぁ......はぁ......」
階にして40階は降りたところで少し息が苦しい。おかしい。こんなに早く息が上がる筈がない。もしかして酸素供給が止まったのか?この境界でら酸素精製器で作られた酸素を空気内に程よく供給しているのだ。その装置が止まっている可能性がある。俺は降りる速度を緩めてまずは、酸素供給装置を見に行くとこにした。




