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境界のアビス  作者: 棗喰う
序章
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第1話 境界接触

第1話 境界接触


2034年。東京都中野区。


空を見ながら歩いていた。学校からの帰り道。今はちょうど上り坂を歩いている。蝉が騒がしく、日差しが照りつけて暑い。


家は田舎と都会の間みたいなところにあるため、中途半端な自然と人工物が等間隔に見える。


家に着いた俺は「ただいま」と言うが、家には誰もいなかった。父は仕事だろう。妹はまだ、学校だろうな。


帰宅し、一段落したら俺はスクリーンテレビをつける。手を横にスライドしてチャンネルを変えるが、どのチャンネルも境界実験について報道されている。聞いた話だと人類が単次元から多次元に進化するための実験で、目的としては土地の確保だとか。確かに他の次元に移れればそこを開拓して農業や産業をすればこちらの次元で土地が空いて人類は窮屈な思いをしなくて済むのだ。


しばらくして俺はニュースを聞き流しながら宿題をやり始めた。すると、電気が落ちて、かなり遠くの方で爆発音が聞こえた。俺は慌てて窓から音のした方を見てみる。


「.......え?」


思わず声が出てしまった。そこには境界実験の行われている方角で黒い球体が急速に膨らみ、広がっていく。木々を飲み込み、家屋を。そして人々の悲鳴が遠くからでも聞こえる。それはあと3秒もすれば俺を飲み込むだろう。俺は死を覚悟して目の前が真っ暗になった。


「う.......生きてる?」


俺は一瞬、気を失ったが目を開けた。そこに広がっていたのは暗闇。

見えないほどの闇。手探りで自分の居場所を探る。どうやら家の様だ。目が慣れてきてはっきりと闇を見る。


どこかゲガをしてないか確認したが、五体満足であった。記憶も大丈夫そうだ。窓の外から空を見上げてもそこには空は広がってなかった。

蝉は鳴いているがどこか頼りないし、日差しは。いや、太陽が見えないし、雲なんてものはない。空に広がるのは深淵であった。


俺はこれが科学災害であると判断して避難所である学校に向かう。

科学災害は家にいると危険だ。家に使われてる建材では科学物質を防げないからだ。


俺は身支度を済ませると避難場に向かう。


街に辿り着いた時、そこは地獄に近かった。人々はパニックになっており、街を照らす光は何にもない。電光掲示板も信号も光を失っている。


悪い夢だ。本当にそう思う。奇声をあげる人。家族を探す人。車は止まっており、鳥も虫も姿を見せない。


俺は急いで学校に向かおうとしたら突如、悲鳴が聞こえた。俺は振り向いた。そこには何処からともなく現れた黒い化け物がいた。


体は不定形でグネグネしているが、1m70cmはあるそれは人を襲っていた。パクリ、パクリと人を食べていく。咀嚼音は聞こえない。丸呑みだろう。


俺は悲鳴を上げる前に足が動いていた。あれは勝てないと本能が告げる。人が使える体術など意味をなさないと思われる化け物は俺に気づいたようで、ものすごいスピードで追ってくる。


俺は走り出す。学校に向かおうと思ったが、これを連れて行けばパニックになると思い、進路を変更した。目標は父さんの勤務している警察署だ。


あれを倒す事はできずとも、足止めをする程度の武器はあるんではないかと思いたい。それにこの状況では大人を頼るのが一番だと思ったからだ。


俺は止まってる車や倒れている人を避けながら向かう。後ろを向かずとも背中を刺す捕食者の視線は感じているため死ぬ気で走る。周りには襲われる人がいる。だが、それを助けるの力は今の僕にはない。助けたい。でも、人を助けるのができるのは自分の身が守れるものだけだ。今の俺には彼らを助けることはできない。


血に塗れた道路を走る。走る走る。

追付かれれば死ぬ。間違いなく。

化け物のスピードは全速力の俺とほぼ変わらない。50m走6.2秒の俺と変わらないのだ。それに速度が変わらなくても体力面で負ける。すでに、足は震えて体は疲れきっている。それでも走るしかない。走る走る走る!


「く、まだだ!」


しばらく走っている間に視線は消えた。それを確認すりために後ろを振り向くと子供が黒い化け物に襲われそうになっていた。


俺は逃げるのに夢中でどうやら、子供に黒い化け物を押し付けてしまったようだ。子供は泣いている。その表情は見たことないぐらいに怯えている。

あれが命の危機というもの。

日常生活を送る中ではまず見ない。俺はその表情に固まった。


それでも俺は子供を助けに行く。足は震えている。だけど拳を握り、足を叩く。手が震える。そしたら唇を噛み締める。助けないという事を俺の正義が、心が許さない。当然、俺自身も許さない。一歩、二歩、と死への道を歩く。3歩目から勢いよく地面を蹴る。


「うおおぉぉ!!」


俺は化け物が子供に襲いかかる瞬間に子供を押しす。俺は化け物のを間近で見てわかったが腹が裂けてそこが口になっていた。俺はそれに呑み込まれる。


父さんとの約束。自分の正義を果たせた俺は満足した。だが、死にたくはない。化け物の中で必死に足掻いた。化け物の体内は水中の様だった。そして丸っこい物に手が触れる。俺はそれが化け物の心臓だと咄嗟に思い掴んだ。


いや、思いたかった。


それを握りつぶした。


すると、その丸いものはすり抜けた。

正確には俺の体に溶けて入ってきた。


「うぁぁあぁ!ぐ、ぐぅあぁぁぁ!」


叫んだ。痛いから。なぜ?痛い?なんで?


口から血を吐く。脳漿が揺さぶられる。鼓膜を伝う不快な水音。全身に駆け巡る絶望感。


体の中に流れてくるそれは禍々しい訳ではなく、異物だ。俺という自我を壊すほどの威力。まるで脳の中がごちゃ混ぜにされた気分だ。


俺は暴れた。俺は力いっぱいに暴れた。


「うがぁぁぁぁあ!痛い!苦しい!う、うぐ。あああああ!」


暴れた。獣の様に。頭が割れる感覚に暴れた。そして化け物の内部を切り裂いて外に出た。


俺の周りには化け物の残骸、黒い液体が飛び散っている。

俺は外に出てた。化け物の外に。

俺のからだには黒い水が付着している。化け物の外に出てもまだ痛い。だが、さっきよりは幾分かマシだ。


「なにが起きたんだ?う......」


頭が痛い。手が痛い。俺は目線を手に向けると、俺の手は光っていた。


「な........」


俺は絶句した。どういう事だ?俺は大丈夫なのか?


手は動くし、光に悪い気はしない。

わけがわからない。そして意識を手に向けると手の光を消すことができた。


「助けて!!」


泣き叫ぶ声が聞こえた。


俺は頭を上げて周りを見渡す。さっき助けた子供がほかの化け物に襲われそうになっていて泣いている。


俺は走り、手を再び光らせて化け物に殴りかかった。


すると化け物は黒い液体を撒き散らしながら飛び散った。


「え?」


殴りかかった俺が驚いた。

なぜ殴りかかった?

頭の中に流れてきた情報。手に宿る光は全ての異常を取り払う。

頭がついていけないし、体もついていけない。いま、俺の体は俺の意思に反して動いたのだ。


俺は手に力を入れて光を消した。


「と、とりあえず逃げなければ!君、大丈夫か?」


俺は一旦、考えるのをやめて子供に向かう。


「う、うん。た、あ......有難うございます!」


子供は恐怖の淵から解放されて、声をひねり出した。


俺はその言葉を聞いいて安心した。そして子供の手をとってた。子供は俺のかを見て安心したようだ。顔からは少し恐怖が薄れていく。


「ここにいては危険だ。避難所にむかうよ!」


そう言って進路を変える。警察署に向かう道はどうやら化け物が大量に湧いており、この数を相手にするのは無理だろう。

俺はしばらく歩きながら考えると学校に向かう事にした。ここから近いし、自分の学校だ、襲われた時に逃げ出すのは簡単だからな。


この手があればアレを倒す事ができる。ただ、まだわからない部分が多いため、過信せずに行こう。

これが俺を裏切りことも考えなければならない。


学校に向かう途中。襲われている人を助けながら進む。


「は!.......せや!」


化け物を殴る。奴らの攻撃は丸呑み意外に存在してないため、避けるのは容易だ。


全てを助けるのは無理なため、近くにいる人を助けつつ、学校に向かう。子供の手を取って。助けた人達はお礼を言い俺についてくる。後ろに向かって


「いま、避難所に向かってます!助かりたい人はついてきてください!」


と言いながら走っていく。


学校に着くとそこには化け物がいなかった。いや、死骸がたくさん転がっている。


(誰がこんなことを?化け物を倒せるものがこの学校にいるのか?それは味方か敵か.......)


そんなことを考えていると校内から「こっちだ!早く来い!」と声が聞こえたため警戒しながらそちらに走っていく。


冷静になるとその声には聞き覚えがあった。俺の警戒心は無くなった。


「錦か!俺だ!神凪だ!」


やつは体育委員長の錦 遠野だ。

人の姿を見て安心した。

自宅に着いたような気分だ。体を支配してた絶望感は消え失せた。


「神凪か!生きていたか!体育館にみんな集まっている!行くなら体育館に向かってくれ」


「わかった!」


俺はそう返事をすると、体育館に向かっていった。いまの俺にできることはこの子供と助けた人を誘導することだ。どうやら学校では貯蔵された電気があるらしく、明るい。


中に入ると3、4千人はいた。ただ、みんな衰弱しきっており、このまま放っておいたら危険だ。中に入った俺たちを見る人達は少ない。大体が下を向いて震えている。みんな人が目の前で死んでいくのを見て、それを助けられなかったのだろう。そんな目をしてる。


死んだ人間は家族や親戚もいただろう。失った。なのに自分は生きてる。なんで?と言う目をした人。


いまは助かったけど、この後どうなるのかと未来を心配する人。


ここにはいろいろな絶望が渦巻いていた。


中には助かったことを素直に喜んでる人。生き残ってやりという強い目を持った人もいるが、ほんとに少数だ。


俺の子供の手を離して「ここなら安心だ」と言い、体育館の見回りに行く。


暴れ出したり、自殺すり人を見かけたら止めるつもりだ。今は大丈夫でもこのどんよりした空気が続けばそういう人も現れるだろう。


俺が見回りしてしばらくすると、体育館のステージに上がっていく人がいる。その人は生徒会長である天城 ハウルだ。


「私は生徒会長の天城 ハウルです。みなさん、落ち着いて私の話を聞いてください。現在、この街は境界と境界の狭間に落ちています。そして、街に現れた化け物は境界の生物だと思われます。この生物は物理的な攻撃はききません。ですが、アレに対抗する手立てができたのでみなさん安心してください!この学校周りの化け物は鎮圧しました!」


会長は体育館を見渡してからこう言った。


「みなさん。耐えてください。見えない未来。失った物。いろいろな不安があると思います。ですが、今は耐えてください。この事故は人類の失敗です。しかし!これを乗り越えます!かならず!諦めるのは簡単です。絶望に埋もれて死ねば楽です。でも、です。どうか、負けないでください。生きてれば未来が、光があります。いまが不幸でもこれから先にはきっと光があります。光がないなら誰かが照らしてくれます。今は私が皆様の光となります。どうか耐えてください!」


そう言って天城会長は一礼して体育館から出て行った。


その言葉を聞き、皆は安堵した。少し頑張ってみよう。そんな空気に変わった。笑顔を浮かべている人は少ないが、絶望してる人はだいぶ減った。これなら今を耐えることはできるだろう。


それにしても手振りや口調。それらをうまく使って大衆を操る天城会長は流石だ。たしか、今回の境界研究の一人者の天城 永六の一人息子と聞いている。


俺はこの状況の打破をすべく天城会長の後を追って体育館からでて、生徒会室に向かった。


会長が言ってた倒す手段とはこの手と関係があるのだろう.......

主人公、神凪 真人 男

生徒会長、天城 ハウル 男

体育委員長、錦 遠野 男

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