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俺がトラックに轢かれてから転生して美少女奴隷ハーレムを目指すまで ~転生チートも忘れずに~

 突然だが俺はほんの少し前、トラックに轢かれて死んだ。間違いない。

 そしてここは生きていたときには見たこともないそれはもう何もない空間でなぜかポツンと置かれている椅子に俺は座ってる。


 これは、神様の手違いで死んでしまった俺への罪滅ぼしに特別な能力(チートスキル)を与えて異世界転生させようってことだな。俺にはわかる! だって俺、そういうの夢見てきたから! 打ち合わせ通り! 俺の人生は今、ここから始まる! さっき死んだんだけど!


 さーて神様はよこい! できれば女神様希望!


 と思っていた矢先に目の前に小さな光の玉が現れ、それはみるみるうちに人の形になった。きっと神様だ、ナイスタイミング!


 そして打ち合わせ通り人の形をした光はいかにも神様っぽい服を着た幼女になった。さすが神様、幼女の姿で現れるとはいろいろ分かっていらっしゃる! などと思っているうちに俺の目の前で具現化した幼女な女神様は俺に話しかけてきた。


「こんにちは。おにーさんはさっきトラックにひかれてしんだあわれなひとですね?」


 哀れは余計だ、と思いつつも頷いてそれを肯定する。幼女相手であってもここは我慢だ。いや、幼女相手だからこそ我慢! 

 幼女な女神様は返事を確認すると話を続ける。


「えーと、しりょうによるとおにーさんのなまえは『なろーしゅん(奈浪旬)』いきていたせかいのじかんで○○ねん×がつ△にちにうまれで――(中略)――トラックにひかれてきょうねんじゅうろくさいでてんじゅをまっとう。おにーさんあってますか?」


 そうそう、あってるあってる! と俺ははやる気持ちを抑えつつ頷く。


「あわれなことにトラックにひかれてしまったおっちょこちょいなおにーさんは、ここでせつめいをうけたあとはおにーさんたちのせかいでいう『てんごく』にいくことになりまーす」


 え、天国? ちょっと待って、異世界じゃないの?

 年長者として幼女の間違いは正さなければならない。ということで俺は幼女に確認する。


「いせかい? おにーさんはてんごくいきでーす。てんじゅをまっとうしたおにーさんはこのあとてんごくにいくことになりまーす。どんなてんごくかはべつのたんとうさんからせつめいをうけてくーださい」


 いや、ちょっとおかしいだろ、それにトラックに轢かれて天寿を全うって絶対この幼女間違ってる。説明しても分かってくれそうにないし幼女は惜しいけどここはもう少し話の分かる神様にチェンジするしかないのか?


「うーん、誤解があるみたいだからもう少し詳しく説明したいんだけど。もっと偉いというか、別の神様に代わってもらえないかな?」

 ここは決断せねばなるまいと俺は苦渋の判断を下す。さらば幼女! 次に会ったときはきちんと責任を持って愛でてやるからな!


「はーい。でわでわ、ちょっとまってくーださい。えらい人をよんできまーす」


 そういうと幼女は俺に向かってぺこりとお辞儀をすると先ほど現れたのを逆に辿るように光に包まれ、そのまま小さな光の玉になって何かに覆い隠されるように音もなく消えてしまった。

 あれ? こういう場合はもう少しゴネないとダメかと思ったのに思ったより簡単に話が進んでいるな……幼女も物分りがいいというか手馴れてるというか……よくあることなのか? まあいい。さらば幼女! また会う日まで! 次に会ったときは頭なでてやるからな!


 幼女が姿を消し周囲に静寂が訪れる。もしこのまま放置されたらどうしよう、あの幼女がただの幼女な女神様ではなくドジっ子幼女な女神様だったら……ありうる……

 などど思っているとまた目の前に光の玉が現れた。それは先程よりも大きな人の姿を形作る。きっと今度は美少女な女神様だ! さすが幼女、ちゃんとお使いできたな!


 そしてそこに現れたのは……どう見てもリクルートスーツを着た見た目二十代半ばの女の人だった。この人も神様? この人がさっきの幼女の言っていた偉い人? 幼女な女神様の次は美少女な女神様じゃないの? 打ち合わせと違わない? なんだか神様から説明を受けるというより新人教師との進路相談みたいなんだけど。

 そんな俺の疑問をよそに神様は俺に説明を始めた。



「ええと、さっきの繰り返しになると思うのだけれど、名前は奈浪旬、あなたの世界の時間で○○年×月△日生まれ――(中略)――トラックに轢かれて死亡。享年16歳。間違いない? 」


「はい、間違いありません」

 その内容が幼女な女神様の時と同じ内容であることを確認し俺は頷く。


「ならこの後はあなたたちのいう天国に行くことになるから」


 え? ちょっと待って、ここもさっきと同じ? 手違いとかミスとかそういうことじゃないの? 天国? 異世界転生するんじゃないの? 俺の異世界ライフは? 俺の美少女奴隷ハーレムは?

 思わず狼狽する俺。これは予想外の展開だ。打ち合わせが違いますよ神様! 

 そんな俺を見て神様はやれやれ、とため息をついた。


「口に出てるわよ? あまりいい趣味ではないから気をつけたほうがいいわね。生まれてからトラックに轢かれて死ぬ所まで運命通り、寸分の狂いもないわね。スケジュール通りよ。だからこの後も予定通り天国に……」


 その瞬間、俺のバラ色な異世界転生人生の予定が足元から崩れ始めた。そんな! こんな人生あんまりだ! まだやりたいことは山ほど残ってるのに! 神様、俺の人生どうしてくれる!


「死んでから今まで期待に胸を膨らませていたあなたははどこに行ったのかしら? 一応聞いてあげるから話してみなさい。あなたはどうしたいの?」


 俺はこんな死に方は納得いかない、俺は異世界に転生して美少女奴隷ハーレムを作る。もちろん転生するにあたっては特別な能力(チートスキル)を貰うのも忘れずに。そんな異世界転生に対しての思いの丈を全て話した。別な意味で進路相談になってる気がする。

 俺の話を聞き終えた神様はまたしてもため息をついてから俺に説明を始めた。


特別な能力(チートスキル)? そんなのダメに決まってるじゃない。転生先の世界に迷惑かけるかもしれない力を簡単に渡せるわけないなんて普通に考えれば分かることでしょ?」


「なんでもいいから! 何か貰えればこっちでどうにかするから!」

 舌先三寸でいいから何か手に入ればこっちのもの、不遇スキルで大逆転なんてよくある話。俺も不遇スキルで成り上がってやる! 俺ならできる。いや、俺だからこそできるはず! だから何か特別な能力(チートスキル)を! 


「そうねぇ……ならスプーン曲げなんてどうかしら?」


 一瞬の静寂。


『す ぷ ー ん ま げ ?』


 え? なんだよスプーン曲げって。何に使うんだよ神様!

 そんな俺を余所目に神様は話を続ける。


「知ってるでしょ? スプーンっていう金属製食器の根元を親指と人差し指で挟んで擦りながら念じると『くにゃ』って曲がるやつ」

 そういいながらポケットからペンを取り出すとその中程をつまんでゆらゆらと揺らして見せる。曲がるはずのないペンが大きくしなって……ってそういうことじゃない! スプーンは知ってる! 俺は騙されない!


「自分でどうにかするからなんでもいいって言ったのはあなたじゃない。スプーン曲げだってうまく使えばそれで一財産作れるわよ? 実際あなたが生きていた世界にもいたんじゃないかしら?」

 あ、見たことないけど聞いたことはある。というか、アレ? さすがにそれは……という俺のことなどお構いなしに神様は話を続ける。


「仕方ないわね。おまけしてフォーク曲げも付けてあげるからそれで納得しなさい。あ、フォークもスプーンと同じ金属製食器で……」

 それ変わらないし……


「二つも持って異世界転生なんて特別待遇なのよ? これでゴネたりするなら予定通り天国行きね。こっちとしてはそのほうが有難いんだけど、それでいい?」


 そう言って神様は話を打ち切ろうとしてくる。

 それは困る。異世界転生そのものが無くなったら俺の予定が台無しだ、それだけは回避しないと……スプーン曲げで良しとするか? 成功例がある以上ある意味では安牌なわけだし、ここは俺の方が折れるか。


「分かりました、それでお願いします。それで美少女奴隷の方は……」


「そうね、奴隷のほうなんだけど、美少女の基準は世界毎に変わるからそこの保障はできないけれど、とりあえず周囲に奴隷がいればいいのよね? それはサービスしてあげるわ。その辺は安心して新しい異世界人生を満喫しなさい」


 おお、まさしく天の声! サービスしてくれるとは物分りがいい! 神様から女神様に格上げ! よし、これで転生チートで美少女奴隷ハーレム人生だ! がんばれ俺! 俺ならできる! いや、俺だからこそできる!



 と紆余曲折あって俺の異世界転生物語は始まるのだった。






「おつかれさまでしたー」

「はいお疲れ様。でも、あの程度はあしらえないとダメよ?」

「はい、べんきょうさせてもらいまーす。でもいーんですか?」

「金属製の食器が無い世界の奴隷に転生するんだから大丈夫じゃないの?」

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