プロローグ
無理矢理表現、自殺描写があります。
嫌いな方はUターンを。進むのならば、自己責任でお願いします。
「愛してるいるわ、ノア。必ず貴方に会う為に戻って来る。だからどうか、世界を恨まないで。」
強く吹く風が長い緩やかな金髪を靡かせ、若葉色の瞳を優しく細めて女は笑う。女が両手を伸ばした先、男が一人、必死にその手を掴もうとしていた。
「ティア、セレスティア!嫌だ!私は貴女無しでは生きられない!世界など滅びても構わない、どうか、私と共に…!!」
一つの三つ編みに結った男の長い銀髪もまた、強い風に煽られはためいている。男は、深海の碧の瞳を涙で濡らし、邪魔する風の中、必死に女に近づいて行く。
「ダメよノア。貴方は生きるの。何十年、何百年、何千年かかるかはわからない。だけれど必ず帰ってくるわ。貴方の元へ。愛しい貴方。約束よ。どうか世界を恨まないで。私が守るこの世界を、どうか貴方も愛して。」
女は愛しい男へ微笑み掛け、まるで呪いのような約束を乞うた。そんな女を眩い光が包み込む。
「セレスティア。約束だ。私は必ず、貴女が守るこの世界で、生きて貴女を待つ。何千年だろうと、何万年だろうと待ち続ける。だからどうか、必ず、私の元へと帰って来てくれ。ーー愛している。」
約束の言葉を口にした男を嬉しげに見つめ、女は瞳を閉じる。
男は、全てを焼き付けるように、女の姿を見つめていた。
二人の指先が触れた瞬間、光は目が眩む程強くなり、光がおさまったそこに、女の姿はなかった。
強風はおさまり、曇天だった空に光が差す。荒地にはたちまち草が生え、花が芽吹く。荒れ狂っていた海も鎮まり、穏やかな波が寄せては返していた。
イヴァンダル暗黒時代の終わり。
救世の女神誕生と共に、一人の男が、愛しい女を失った。