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エリーのおきらく孤島生活  作者: 久留米
5/7

5 はつしゅっか・・・?

本当にどうでもいいことを言いながら鎌を取り出す。鎌はちょっと可愛いピンクの金属で出来ていて、持ち手のところが赤いタータンチェックの柄がプリントされているなんかエリー向けなデザインだった。ちなみにギルメン作。『リルムが作った可愛い鎌』が正式名称だが、エリーはただ単に「マイ鎌」と言っていた。


 どんぐり。それはハクロ(ハーヴェストクロニクル)における、パチンコの弾になったりピストルの弾になったり、はたまた挽いて粉にすれば『どんぐりパン』、『どんぐりクッキー』の主原材料になったりする初心者には必須のアイテムだった。育て方も簡単で、耕した畑の上にどんぐりを埋めて、水を5日間やり続けると若木になり、その後3日後からどんぐりがなるようになる。ハクロの『どんぐりの木』は、背が高くならず、大体1mくらいの大きさでとどまり、実を付け続ける可愛いやつだ。当然収穫も大変容易で、冬になるとクリスマスツリーっぽく飾ったりする現実でちょっと寂しい人(=エリーとか)も居たりした。


 とりあえず雑草を刈る。どんぐりは30個あるので、とりあえず10個分農場を作る。ザッ、ザッ、結構雑草の背丈は高いが抜群の切れ味と可愛いルックスが売りのマイ鎌はものともせず刈っていく。


 「うああ、ゲームと違って刈った草残るんだね・・・」


 現実的には当たり前の事なのだが、ウインドウなどが標準装備されているエリーからすれば刈った草が地面に「くたっ」となっているのは残念な事実だった。


 仕方が無いので、手で集める。手を切る。


 「うあっ。手切っちゃったよ。イテテ・・・」


 地味に痛いので、ウインドウに何かいいもの無いか見てみるが、無い。


 「ハクロって、魔法とか無いんだよね・・・スキルはあるのに・・・」


 そう、MMOオンラインゲーにしては珍しく、ハクロには魔法アビリティが無い。仕方なくスキルをチェックする。


 「でもあたし、スキルは農業系と料理系しか取ってないからなあ。」


 多くのハクロプレイヤーはこんな感じの残念スキルどりである。前にも述べたとおり、戦闘が好きな人、傭兵プレイしている人くらいしか戦闘系スキルはとっていない。


 「10個分集めると大変だねこりゃ。まだ1個分しか集めてないのに手が痛いし。」


 鎌があるので草はちゃんと刈れるのだが、草が散らばってしまうのだ。これはよろしくない。


 「ん! あー、これ使えるんじゃないの?」


 スキル「なんでも薪」:薪にしたいものに手をかざす。すると自動的に薪になる。燃えるものしか薪にならない。木材ではないものを薪にすると、『薪のようなもの』が出来上がる。


 「ぐぬぬ。おのれ、これ最初に見つけてれば手を切らないで済んだな。まあ、試しにやってみよう。」


 草に手をかざすが、何も起きない。


 「えーっ。そ、そんな。」


 『薪になーれ☆』と念じながら手をかざすと、今度は草がエリーのげんこつぶん位の束になり、どこからともなく紐みたいなのがシュルシュルと巻き付き、ギュッギュッと草を捻り上げながらぐるぐると固定された。出来上がったのは草がギュッギュってひねりドーナツのような、実に的確な『薪のようなもの』だった。


 エリーは調子に乗って手をかざしまくり、だいたい1個分の面積で5個の草ドーナツが出来上がることが分かった。


 「よし、どんどん行こう!」


 草を刈る。シュッシュ。薪を作る。ギュッギュ。シュッシュ。ギュッギュ。シュッシュ。ギュッギュ・・・。いつのまにか10個分農地を作るつもりが、20個分も作っていた。


 「おおう・・・」


 そう。草ドーナツも一緒に量産され、そこら中にゴロゴロしていた。20個分*5なので100個できている。


 「どうしようかな、これェ・・・」


 自業自得とは言え、途方にくれそうになる。チュートリアルマップには倉庫が無いからだ。


 「・・・」


 ちらっと見る。でーんとしている奴を。ちら。ちら。


 「あれってさ・・・きっとさ・・・アレだよね・・・」


 恐る恐る荒地の小屋よりに鎮座している「アレ」。まあでっかい木箱を見る。農業系のゲームをしたことがある人はあれがなんなのかなんとなーくわかると思うが、木箱はつまり、出荷箱である。ハクロではこの出荷箱に農作物や制作したものを、入れる(=出荷する)ことによって、貨幣を調達するか、モンスターを倒して貨幣をドロップするシステムだ。まあ、モンスターは貨幣の他に肉やら素材やらもドロップするし、それを加工しても、出荷してもどちらでもいい感じのものとして扱われている。


 「ためしに入れてみようかな?」


 適当に草ドーナツを拾い、何の変哲もない木箱に入れる。(結構大きいので片手で開けようとするとふんぬっとまた女性っぽく無い声が出た)で、しばらく経つとこんなウインドウがポップアップしてきた。


 『薪のようなもの 10シリカ』


シリカとはゲーム内での貨幣単位である。


 「おおおっ、やっぱりっ」


 やはりこの箱は出荷箱だったようで、エリーは小屋の棚にあった収穫籠っぽいものにひょいひょい草ドーナツを入れては出荷箱にボトボト入れる作業をまあ・・・・結構繰り返した。



 「うおお・・・100個とかきつい・・・。明日は筋肉痛だぜこれェ・・・」


 エリーはお年頃なので(微妙な)、明日ではなく明後日に筋肉痛かもしれないが。


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