3 いつかみた こうけい
一歩外に出る。それだけのことだが、かなり勇気がいる。恐る恐るドアノブに手をかけて開ける。
太陽の光が絵里を照らした。ふと目の前に広がった光景を見る。
「ふ、ふぬおお・・・」
目の前には、そう・・・荒地が広がっていた。草は生え放題、石がゴロゴロしている。荒地はかなり広くて、絵里が出てきた部屋(というか小屋)から50m四方くらいに広がっていた。
「・・・? なんぞ、これ。なんか見たことあるなあ・・・」
あまり気にしないようにして、とりあえず水がありそうなところを探す。というか小屋の隣に昔懐かしい感じの井戸が設置してある。絵里はそれに駆け寄り、
「お、水だー。のものも」
と、ポンプを押した。ジャー。水が出てくる。
「・・・・あー」
悲しそうな声を出す絵里。そう、ポンプを両方というか立って押さないといけないので、必然的に出口から水を受け取るための器か何かが必要なのだ。ポンプ式とか良いからバケツとかで汲めるやつよーそっちのほうがすぐ飲めるのに・・・とか絵里が思ったのも仕方がない。
小屋に戻り、ごそごそする。食器棚ぽいのあったよね、と。食器棚をあさってみると、コップがあった。ついでにとキッチンカウンター的な中身も見ると、予想的中な感じで鍋発見。絵里が好きなもっさりとしてル・○ルーゼぽい感じのものだ。
「おーいぇー」
水が飲める水が飲めるぞと聞く人が聞いたら違う曲に変換されちゃう(同じ曲かもしれないが)メロディーで歌いながらスキップで井戸に戻り、全力でポンプを押した。
これまたぽってりとした手作りのデュラ○ックスぽいコップでゴクゴク飲む。
「ふー・・・おいしーな」
水を飲んで、落ち着いたところで花を摘みたくなった(トイレ的な用事だ)絵里はキョロキョロと辺りを見回す。
「で・・・やっぱトイレ的なものとかお風呂的なものとかはない・・・という」
ふぐぬぬ・・・といいながら荒地を見回る。荒地の他には変な木箱がでーんと横にある。それだけのようだ。
荒地の周りにはぐるりと木々がおおっており、細い道がついている。そこがどこに通じていくのかは今は保留にして、やはりそこらへんで用をたすしかなさそうだ。
「外でとかどんな罰ゲームですか。小はまだしも大とかどうしようもなくね?」
ぶつぶついいながら小屋の影に行く。そこにトイレがあった。
「えっこれ、ちょっ、まっ」
もうすっかり外で用を足す気になっていた絵里は再度びっくりしてしまった。ついでにそう言うものもどこかに消えた。
あまり・・・あまり描写はしたくないが白いトイレがでん、と地面に据え付けられている。蓋を開けてみると水が・・・水がある。おそるおそるレバーを引くと、ジャーっと流れた。さすがにトイレットペーパーは無く、自分でどうにかしやがれ的な感じのトイレである。でも野外でコレ。水とか絵里のいろいろなものがどこに流れていくのとかはあまり考えない方が良さそうだ。精神的に。
とりあえず引っ込んでしまったので無理矢理する気にもなれず、小屋の前に行ってぼーっと荒地を観察してみることにした。
ぐーっ。昨日の夜先に晩酌をしてしまったため、なにも食べていない。水を飲んだので、取りあえずは大丈夫そうだ。
「ふぐぬぬ。というかこれはこれで詰んでねーですか、誘拐じゃないとして」
つぶやいてみる。誘拐じゃないとして・・・これなんだろう。この状況。荒地。トイレ。井戸。小屋。細道。謎の木箱。見たことある光景に見えるのは何故・・・。
「パズルは苦手じゃないんだけどこの答えは解答したくない。本能が叫んでいる。」
なんとなく、わかってきた。というかどこでこれを見たのかを思い出したに近い。
「この光景をわたしは知っている。これは・・・ハーヴェストクロニクルのチュートリアルマップにとてもよく似ている・・・」
絵里は生まれて初めて手と膝をついて頭を下げるあのポーズをとった。・・・orz。