2 しらないてんじょう
「ふぬぐぐぐ・・・」
乙女にあるまじき声を出しながら絵里が起きた。若干背中が痛い。
「・・・・えっ?」
絵里は寝ぼけながら背伸びし、起き上がって目をこすった。人からはでかい目だと言われているが自分ではそんなでかくないだろjkと思っている目がいつもよりも1.5倍くらい大きめな感じで見開く。
立ち上がって周りを見回すがなにも無い。いや、何もなくはないのだが、混乱している今、状況把握しきれていないのが事実だろう。
「こ。こ。これ。。。。」
そう言ったっきり、絵里は静止してしまった。
昨日晩酌でビールを飲んだ。お気に入りのソファ(一人用)で撃沈した。ここまでは覚えている。そして今起きた。この・・・ログハウス調の部屋で。
たっぷり10分はそうしていただろうが、もう少し長かったかもしれない。絵里はロボットにスイッチが入ったように再起動した。
「ふぬ・・・ふぬ。とりあえずここは私の部屋ではなさそうだ。なんだこの誘拐されちゃった感は・・・」
まあ、普通に考えたらそこに至るだろう。絵里はキョロキョロとしつつも、不安そうな感じでログハウス内を見回した。
まず、見つけたのが木製のベッド。触ってみると布団はワタのような羽のようなふわふわした感触。布団の下にはスプリングの入っていないマットレスのような硬いパッドが置いてあった。
「ていうかベッドあるならせめてその中に寝かせろよ・・・」
少しだけ痛む背中をさすりながら当然の感想をもらす。
広さは10畳くらいか。偶然だろうが、広さは昨日まで自分が住んでいたワンルームくらいだった。
ガラスが入った窓。これはハメ殺し。部屋の隅にはストーブと煙突がついたキッチンストーブが有り、その隣には食器棚とキッチンカウンターがある。ストーブのそばまで行ってみたが、水道っぽいものは無かった。
「にゃ?・・・水無いの?この家(?)・・・」
どこかの猫系キャラみたいな口調になりながら水を探す。が、無い。
「ふぬぬぬ・・・あ、誰も来ないのかな? ドアに鍵がかかってるとか・・・か?」
一人ぐぬぐぬふぬふぬ言いながらドアを探す。果たしてドアが・・・ある。鍵は・・・掛かってない。というかドアノブしかなかった。
「鍵ねーし・・・どうなってるんだ~」
外に出てみたいけど、絵里はそれを躊躇っていた。そりゃそうだ、起き抜けだしちょっと喉渇いてるし、誘拐シチュだけど誰もいないし来ないし。要するに不安に駆られているわけだ。
そのまま悩むが、一向に誰も来ない。このままでは埓が明かないな、ということで外に出てみることにした。出るんじゃなかった、と後から思うんだけどこの時の絵里は混乱の極みだった。
もう少し現状把握に時間がかかるようです。