新学年スタート
登場人物の名前の読みを少し。
福塔 一颯→ふくとう いっさ
火曳 茜→ひびき あかね
浮世→うきよ
相原→あいはら
楓→かえで
「で、結局のところどっちが悪いんだ」
眉間にシワを寄せたA組担任の大山大助が2人に尋ねる。
「こいつです、こいつ。しかもウェポンまで使ったんですよ」
「アンタなんてセクハラしたでしょうが」
「アレは不可抗力だ。だいたい茜が俺を転ばせたからだろ」
「も、元をたどればアンタが教室の場所を忘れたからでしょうが!」
教室の前方でガミガミ言い争っている2人に終わりが見えないので、大山先生は2人に反省文を書くよう指示し、とりあえず終止符を打つ。
不完全燃焼だが一颯と茜はそれぞれ席に着く。
「あーあ、朝から夫婦漫才ですかぁ?」
「うっさいわね」
茜を茶化しにきたのは隣の席の相原。
この女子生徒、育ちは良いし見た目も黒髪ロングで超が付く清楚お嬢様。
「朝から怒鳴り散らすなんて野蛮もいいところですわね。お肌に悪いですわよ。もう手遅れかもしれませんが」
欠点は一つ、性格が曲がっていた。
「うっさいわね。アンタ、私が男子と喋ってたから嫉妬でもしてんじゃないの?」
「してないわよ! し、してないですわよ。あんなモヤシ男と喋って優越感に浸るなんてどうかしてますわ」
「おい、聞こえてるぞ!」
少し離れた席から一颯が割り込む。
「ったく、誰がモヤシだ」
「あの2人の口喧嘩は1年生の頃から変わらないっすね」
「というかクラスメイトってあんまり変わってなくないか?」
一颯と会話を交わす男子生徒、浮世は続ける。
「何でも2年生からはウェポン所持者をA組に固めたそうっすよ」
「だから人数も少ないのか」
浮世は150cm半ばという男子高校生にしては控えめな身長。
青髪、そして童顔なので中学生にしばしば間違えられる。
「今日の帰りに銀行に着いて来てくれないっすか? ネットで買物をしたんで」
「別にいいけど」
「じゃあ決まりっすね」
放課後の約束をしたところで朝のホームルームが終わる。
1時間目は体育館にて朝会。
生徒が続々と教室から出ていくのに続いて一颯と浮世も体育館に向かった。
芽園高校は北校舎と南校舎で別れていて渡り廊下が繋いでいる。
それぞれ4階までで生徒が生活する教室は北校舎、特別教室などは主に南校舎にある。
体育館は独立して本校舎の近くに建てられていた。
「それでは生徒会長挨拶」
体育館にアナウンスが響く。
壇上に上がった生徒会長――福塔楓は深々と頭を下げてマイクを手にした。
「一颯のお兄さん、生徒会長になったんすね」
「らしいな」
「凄いっすねぇ」
なんでもこなす兄を誇りに思う一方で劣等感も感じている一颯は無愛想な表情で楓を視界にいれている。
おはようございます、で始まる挨拶のテンプレートを生徒会長は淡々と終わらせ、続く校長の話で朝会は終わった。
教室に戻ってからは授業という授業も無く、今日の学校生活も昼までで終わる。
「ちょっとそこの貴方」
相原は放課後の教室で一颯に話しかける。
「なんか用か?」
「今からご予定でも?」
「あぁ、浮世と銀行に寄るんだ」
「まぁ可哀想に。よほど金銭面でお困りになっているのですわね」
「襲う側かよ! 客サイドに決まってるだろ」
「私も同行してよろしくて?」
「ブレないな。いや別にいいけど何で?」
「私、隣のクラスの男子と約束をしてますの。それがめんどくさくなってしまいまして。その口実が欲しいのですわ」
(なんて性格の悪さだ)
「まぁどうせB組の男子なんて私が命令したり、からかったりすると喜ぶ連中ですから」
「ドMの集まりじゃねぇか!」
今後のB組を心配しつつ、一颯は浮世と相原とで校門を出た。