暇つぶし
誕生日に優花から貰ったのは
最近話題のぬいぐるみだった。
あの子らしいなぁ、と思った。
長いものには巻かれたくて仕方ないらしい。
一人だけ取り残されるのが嫌なんだ。
機械音痴なんて嘘。
優花の言うとおり
他人の呟きを見て楽しいとか分からない。
皆、暇人なんだ。
ばっかみたい。
優花は
自分のこと馬鹿って自覚してるし
そこまで嫌いじゃない。
でも
このぬいぐるみ趣味悪いし
誰かイトコにあげちゃおう。
デートの途中に買った
オマケみたいなぬいぐみなんだし
大丈夫だと思う。
てゆうか
俊介が優花と付き合うなんてね。
びっくりしちゃった。
私のこと好きなんだろうなぁ、て思ってたから
でも、誕生日の日に
将太から告白されたし分かったの。
俊介は将太に譲ったんだな、て。
とりあえず
返事は保留。
焦らして焦らして
ばっさり断ってやろう。
ちょっとくらい
暇潰しにはなるんじゃないかな。
SNSよりよっぽど
楽しい暇潰しにね。
大学は推薦で決まったし
私も暇といえば暇なのよね。
でも
悩みがないって決めつけられたのは
ちょっとカチンときちゃった。
私にもある。
それは優花の話してた本田さんのこと。
とっさに知らないって言っちゃったけど、
実は今すごく興味があったりする。
本田さんは
クラスでもちょっと浮いてるくらい
大人しくて暗い子なの。
でも見ちゃったのよね。
あの子が
小説書いてること。
しかも
多分ノンフィクション。
この前
放課後に図書室に行って
勉強してたの。
優花は図書室が静かで苦手だから
唯一、私が1人になれる場所なのね。
勉強ってゆうのは建前で
本音は優花がどうしてもウザくなったとき
1人になりたくて行くところなの。
まぁ、
それは置いといて、
図書室はその日
ガラガラで私1人くらいだと思ってたんだけど
偶然、本田さんもいたの。
本田さんは
私には気づいてなかったと思う。
すごい顔して
何かを一生懸命書いてたから。
気になるじゃない。
だから隠れて様子を見てたの。
そしたら
本田さんは立ちあがってトイレに行ったの。
多分
本田さんも1人だと思ってたから
油断してたんだと思うわ。
書いてたものをそのままにして
トイレに行っちゃったんだもん。
まさか
私に見られてるなんてね。
それで
私が本田さんの書いてるものを見たら
ノンフィクションの小説だったってわけ。
ポエムとかに近いのかな?
よく分かんないけど。
そこには
将太のことと私のことが書かれてた。
まさか
本田さんが将太を好きだなんてね。
だからね
今とても困ってるの。
最初は将太なんて
どうでも良かったけど
私の転び次第で
もしかしたら本田さんに
ハッピーエンドを与えられるかもしれないのよ。
それって
なんかすごくない?
だから
今どうやって
そう差し向けるか困ってるの。
なんで
こんなことするかって?
ただの
暇つぶしよ。