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Q.E.D.  作者: のいん
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2.ファイト!

ああ。忘れるところだった。

彩瀬の担任の先生の話をしよう。


彩瀬のクラスの担任は一言でいうと「熱血」だった。私から見た彼の第一印象は熱苦しそうだった。

緊張している新入生を前にいきなりタメ口で、しかもクラスに入ってからもまた、熱い話を延々と語っていた。

正直、私は一日で萎えた。





二日目から授業が始まるという、ハードなスケジュールだった。

休み時間を通して、周りの生徒も徐々に話し始めていた。対する彩瀬は。

「次の時間ってなんやったっけ?」

と隣の女子に聞いたきりである。その隣の女子は、暗い印象でオタクっぽく、彩瀬と合うとは思えないタイプの女子だった。

クラスで性格が合う女子を見つけるのはそれほど難しくない。彩瀬。お前なら出来るぞ!

中学とはまた違う高校の授業。商業高校には簿記と言う授業が在る。

簿記はまあなんというか…企業には絶対に必要なものだ。これを勉強していれば何かと役に立つ。普通科の生徒は簿記の授業なんて受けないからな。

彩瀬はなかなか理解力のある娘だ。真面目な性格だし。私は彩瀬なら大丈夫だと信じてる。

まあ、高校には留年と言うものが存在するからな。このクラスの中から留年する者もでるかもしれないし。

おっと、初めからこんなんだと駄目だよな。わかってるよ。







彩瀬の担任は簿記の担当をしている。まあ、相変わらず熱い授業しているよ。

新婚かしらんが、一人だけ舞い上がってるように感じたね。本当、若いっていうのも問題かもね。

分かりやすさは、悔しいが高い点数をあげよう。私も聞いててよくわかったしな。

とりあえず、彩瀬も簿記に関しては問題はないようだった。





入学式の後、クラブの紹介があった。この学校は人数が少ないのであまりクラブは無い。

サッカー部とか、あると思ったのに…。(私はサッカー好きだ)

彩瀬は迷っていた。

彩瀬は中学時代、3年間卓球部に所属していた。部長も務めていたし、卓球は好きだった。

この学校にも卓球部はある。

しかし!!

部員が1名しかいない…。


つまり、先輩が一人と言うだけだったのだ。しかも男の先輩だった。

顧問の教師もやる気があるのかないのかわからないような男だったし、私は心配していた。

こんなことなら辞めた方がいいんじゃないのか?他のクラブの方が…。

とも思ったが、他に彩瀬が好むようなクラブはなかった。



四日間という長い期間、クラブ体験があった。彩瀬は卓球部を体験する事に決めたのだが…。

感想はあんまりだったようだ。とにかく会話はないし、最終的には壁打ちもさせられた。

壁打ちをする彩瀬は見ていてシュールで切ない光景だったよ。




そうそう。担任の名前は小中真一郎といった。小中は名前の通り小柄で小さかったが、熱血なので肌が黒かった。

クラブを決めかねている生徒を見ると自分のソフトボール部に誘っていた。ソフトボール部はこの学校で一番キツイ部なのではないだろうか…。

小中は

「クラブは絶対やっておいたほうがいいです。絶対就職でもクラブってやってるか重視されますし、それに思い出にもなるしね。先生も学生の時…。」

と如何でも良い話を繰り広げ、HRの時間を長くするのであった。

とにかく、小中はクラス全員にクラブに入らせる気なのだった。




結局、彩瀬は何を思ったか、卓球部に入る事を決意した。

さっそく、部活に行こう!ともいかなかったが…。

女一人はキツイ。正直私でも嫌だ。私が生身の体だったなら卓球をやりたかった。

彩瀬の中学時代を見てきた私にとって卓球は身近なものだった。毎日、彼女と部員たちの練習を見ていた。

彼女たちは輝いていた。真面目に取り組む姿は女子中学生らしい。

彩瀬が楽しければ私はそれでいい。楽しくないならやめてしめばいいのに…。

人一倍真面目な彩瀬は楽しくないのに部活に向かう。

本当、心から感心するよ。私も見習わなければ。





入学して一週間、一年生だけの泊まり会があった。

要するにハイキングみたいなものだ。山に行って散歩。遠足だな。

まだクラスに皆馴染めていないのに急な事だ。まあこれは教師たちが友好を深めるように強要するものに等しい。

ともあれ、彩瀬もこれに参加する事になる。お金は払ったしな。

行くのは自由だが、行かない理由が子供たちにはない。



宿泊場所は大阪でも南のほうで皆でバスにのった。学校は大阪でも北寄りだからな。座席は出席番号で決められていてつまらない。

まあいきなり仲良しとかそんなので固められても困るが。

しかしまだ全然知らぬ者同士。テンション高い組と普通組と、やる気ない組と、寝てる組と、しゃべりたいけどしゃべられへんなあ~何しゃべんの?みたいな事思ってる組で分かれていた。

彩瀬はどこにも属さない。ただ「無」だった。






なかなかハイキングといわない山周りは楽しそうだった。チェックポイントをまわっていくだけだが友好は深まりそうだ。

しかし彩瀬はあまり話すたちではない。彩瀬はかわいく微笑むだけだった。



夜になり眠ることになった。旅館という名の無料施設に泊まった一行。

どうやら市が運営しているものらしい。ここらへんに来る学生たちはここで泊まる。

食事もバイキングでうまそうだった。私は食べられない。

部屋も出席番号順だったが、同じ部屋の大川真由という女子が国民的アイドルグループいわし相内雅紀あいうちまさきが好きだった。

というか鰯が好きだった。

鰯というのは5人グループで今もっとも人気のあるグループだ。

全員幼いころからデビューし、つねに人気を誇り女子学生の憧れの的だった。

彩瀬も彼らの虜になり、中でも真由と同じ相内が大、大、大好きだった。私が嫉妬してしまうぐらいに大好きなもので、困る。

何故、困るかというと。

彩瀬は彼らの出演しているテレビ番組を録画するのも見るのもかかさない。どんなに忙しくても絶対見る。

相内の事が大好きなので彼が出ている間は瞬きもせずテレビに釘付けになっている。

それはいい。許そう。しかし彩瀬は彼の全てを見ていた。彼の行動すべてを。なんという洞察力。恐ろしい子だ。

テレビごしの人間の動きなど全て把握できまい。しかし彩瀬は相内のこととなると目の色が変わり彼を一瞬も見逃さない。

彼のセリフをすべて覚え、頭の中で録音し、溜めておくのが彼女の得意技。

私も一度、東口百花ひがしぐちももかという昭和のスターを大好きになったことがあったが彩瀬には到底及ばない。

きっと、彩瀬の相内好きにはこの真由もかなわないだろう…そう思わざるおえない。



彩瀬は鰯好きがかなりいたことに嬉しさを覚え、少しずつ楽しんでいった。

部屋のメンツとも少しは話せるしな。それにほかの子ともメールアドレスを交換した。

これでとりあえずは上手くいきそうだな。






宿泊が終わり、学校がはじまってすぐのことだった。

宿泊で少し話すようになった同じクラスの木雪知紗姫きゆきちさきが言い出した。

「自分、イラスト部辞めて卓球部入ろうかなあ~」

なんだと…。





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