プロローグが必ずしも爽やかとは限らない
爽やかではありません・・・・・・
「で、俺が何でここにいるのか教えてくれよ、アンパンマ●。」
俺こと、三園 美邦はいま非常に機嫌が悪かった。ついでに気分も。
俺は昨日、上司に押しつけられたプレゼンをやっとの思いで終わらせ、憂さ晴らしのために同期で営業部の沢村 幸壱と掛かり付けの居酒屋で一杯引っ掛けていた。
酒に強い体質の俺だが、羽目を外しすぎたらしく途中からの記憶が脳内に存在していなかった。
幸い昨日居た居酒屋は顔馴染みであるから多少のヤンチャは『馬鹿だなぁ。』と笑って見逃してくれるだろうし、沢村は俺よりもアルコールに耐性があるし俺よりも飲んでいなかったので無事に俺の家だか沢村の家だかに連行されるだろうと高を括っていた。
翌日は幸いにも土曜日なので二日酔いの頭でデスクワークに追われることもない。
そういう風に打算的に計算をした俺は浮遊感に包まれながら眠りに落ちた。
そして目を覚ますと面倒くさそうな顔をする沢村に介抱されてゆっくりと二日酔いを覚まして帰る、というのが俺の打ち立てた計画だった。
飲みすぎによる吐き気によって眠気を除された俺を待っていたのは爽やかなイケメン、沢村と客室にあるフカフカのベッドではなく俺の家にあるテレビの数倍はある大きなディスプレイに映った国民的自虐ヒーローであるアンパ●マンのお面を被る推定五十歳のおっさんと革張りの椅子に手足を縛りつけられている俺だった。
重たい沈黙が数巡し、●ンパンマンはお子様が聞くには低すぎる声で話しかけてきた。
「君が三園 美邦君でよいきゃな?」
「………………………………………」
「君が三園 美邦君でいいかな?」
噛んだ。
盛大に噛んだ。
恥ずかしそうに頬を掻いてるのがかなりうっとおしいけど今はそんなことは後回しにしよう。
社会人なら質問されたら答えるのが礼儀である。ゆえに俺は口を開いた。
「いいえ、違います。人違いです。」
吐き気を抑え込んでいるせいで若干声が低くなってしまったけど、そんなことは気にしない。
「そうか。それで三園君、私は君にお願いがあって……、え?今なんて言った?」
「だから人違いです。俺はその三園 なんたらかんたらっていう人じゃありません。なので家に帰してください。監禁で訴えるぞ、アンパンマ●」
俺の返答が予想外だったらしく『え?え?じゃあコイツ誰!?』と混乱しているお面ヤロウ。
まぁ本当は正解だけどあからさまに嫌な雰囲気だったので嘘をついた。
口八丁バンザイ。
アンパンマ●は意外と応用力がなかったらしく未だに混乱している。
湧き上がってくる吐き気と眠気をかみ殺しているとディスプレイが切れてしまった。
はぁ、そろそろ帰りたいんだけどなぁ。眠いし、気持ち悪いし………………
なんて考えながら次のアクションが起きるのを待っていると再びディスプレイが開いた。
「嘘をつくことはよくないことだよ、三園 美邦君。私には確かな証拠があって……」
「はぁ、うっぷ………■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。」
………………うぅ、気持ち悪っ。
主人公が初っ端からリバースするって・・・
自分で書いていてどうかと思いました・・・・・・