追放先でも悪役令嬢と呼ばれる令嬢の話
「フウ、暑いですわ。何でこの国はこんなに暑いのかしら・・・」
「悪役令嬢さん。なら、ドレス脱いじゃえば?」
「な、何ですって!とんだませガキね!」
「そういう意味じゃないよ」
僕は小五の山之内悟。近所の駄菓子屋に悪役令嬢さんと呼ばれる外国人のお姉さんが住み着くようになった。
まるで中世ラブロマンスの悪役令嬢のようにロールした髪にドレスを着ている。
「そのドレスじゃ暑いだろうと、お母さんが姉ちゃんのキャミソールあげなさいと言うから持って来たよ」
「まあ、平民の服?破廉恥ね!」
と言いながら。
「少年、ここで店番をしていなさい」
「はい」
奥に入って鏡の前で服を合せている・・気に入っているらしい。
そして。
「お母様に渡しなさい。お礼状よ」
「はい」
すごく礼儀正しい。
だけど、接客態度は傲慢そのものだ。
「ちょっと、五十円の商品で1万円札?ここは駄菓子屋よ。考えなさい!」
「割り込まないでお並びあそばせ!」
「ちょっと、アイスはすぐに選びなさい。開けっぱなしだと溶けるわよ!」
「え、アイス当たり?【鑑定!】偽物ね。しばいて差し上げますわ!」
だけど客は来るようになった。大人まで来る始末だ。
近所のコンビニのオーナー店長が偵察に来た事がある。上底さんだ。
「何でこちらも駄菓子コーナー作ったのに君たちは来ないのだ!」
「あ、上底さん。上げ底だからだよ」
「悪役令嬢だからだよ」
「意味分からん!」
また。
駄菓子屋の前でダンスをし出すキックトックの配信者が来た事があった。
「ウィース!悪役令嬢ネキの駄菓子屋前でダンスをしまーす」
「うけるー!」
「まあ、ピョンピョン飛び跳ねて無様なダンスね!ウォーターボール!」
手品で水を出して動画配信者を攻撃していた・・・
「ギャア!スマホが!」
「ヒドい、服濡れたわ!電車で来たのに」
そんな僕は悪役令嬢さんに選ばれた。
「さあ、少年、エスコートをなさいませ」
「はい・・」
何でも外出は殿方のエスコートが必要だからみたいだ。意味は分からないが嬉しかった。
ドキドキする。
「転移!東京台東区!」
地面に魔法陣という物を書いて移動する。
これはどういう理屈か分からない。
「いらっしゃいませ」
悪役令嬢さんは商品を仕入れるのだ。
「これは何かしら?」
「メンコです。売れませんね」
「少年、これはどうやって遊ぶの?」
「これは・・・」
説明したら気に入ったらしい。
「メンコ一箱頂くわ」
「はい、どうぞ」
「収納!」
空間に仕入れた商品を入れるみたいだ。
すごい手品だ。
その後、東京の街をぶらつく。
移動は電車だ。
街のカフェに行く。
「少年、何か頼みなさい」
「はい、カレーを・・」
「私はこの『森の愉快な仲間達が作ったパフェ』を下さいませ」
街ブラをする。手を引いているから目立つ・・・が誰も何も言わない。
これが東京なのかもしれないと思ったが声をかけられた。
「彼女~、1人?」
「2人ですわ!」
「小学生じゃない?弟君?」
「ウォーターボール!」
「ギャア!これから読者モ撮影があるのに!」
また、芸能スカウトも来た。
「芸能人にしてあげるよ。悪役令嬢ファッション?」
「ウォーターボール!滝のように降れ!」
「ギャアアアーーー!これから寿司なのに!」
撃退している。しかし、めげないスカウトもいた。
ジャバーと雨のように降り注ぐ中、おっさんが悪役令嬢さんを勧誘していた。
「ゲヘへへへへへ、ウシシシ、ワシは虎鉄、女子プロのコーチだ。
いいね。その手品、是非、我が『女子プロレスラーになろう』に来て下さいな」
「まあ、プロレス?」
そして、何故か僕もデビューした。
【おお~と、青コーナーより。悪役令嬢とバッドボーイ、サトル君が入場だ!ヴゥーイングの嵐だ!】
僕は悪役令嬢さんをリングまでエスコートする役だ。
ジャージの背中に悪と刺繍されている。悪役令嬢さんは普段着のドレスだ。
僕はリングの側で待機だ。悪役令嬢さんだけがリングに上がる。
どうやらヒールのようだ。
「オ~ホホホホホホ!」
「よろしく、ヒロイン京子よ。正々堂々と勝負をしましょう。試合前の握手よ」
試合前の握手で・・・ヒロイン京子さんとの握手に応じたふりをして。
足をかけて転ばす。
「あら、ごめんあそばせ」
「キャア!」
【いけません!ヒロイン京子を転ばしました!ヒロイン京子反撃です。正拳の連打です】
「オ~ホホホホホ!甘くてよ。ダンス!陽気な貴婦人のダンス!」
「な、何故、当たらない!」
【かわされています!不思議なダンスです。おお~と、ここでバットボーイサトル君が凶器の扇を渡しています!
注意です。サトル君は小学生です。悪役令嬢に無理矢理従わされている可哀想な子です。サトル君へのヴゥーイングはお控え下さい!】
「はい・・・悪役令嬢さん」
「オ~ホホホホホホ!おりゃおりゃですわ!」
「ちょっと、悪役令嬢さん。ここで私の技を受けるはずでしょう?ロープに・・痛い!」
「あら、ブックがなければ戦えないのかしら・・・まるでお膳立てをしなければ何もできない馬鹿王子と同じね!」
「何を!」
【おお~と、ここでヒロイン京子、背後を取った!スープレックスの体勢だ!】
「フフフ、悪役令嬢さん。ブックを無視したのは貴女ですからね」
「あら、そう?」
【おおと、ヒロイン京子、スープレックスを仕掛けましたが、ああと、勢い余ってそのまま元の状態に戻りました。360度回転しました!】
「オ~ホホホホホ!アクロバットダンスも得意ですの。扇乱舞ですわ!」
「キャア!」
カン!カン!カン!カン!
【ここでゴングです。試合終了です。結果は悪役令嬢の反則負けです!おお~と、まるで挑発するかのようにトップロープに登って、ダンスをしております!すごいバランスです】
「オ~ホホホ!皆様、試合には負けましたが私の勝ちですわ!」
「汚いぞ!悪役令嬢!」
「キャー!キャー!悪役令嬢、ポスター破って!」
「はあ、はあ、罵って下さい!」
・・・・・そうだ。皆、私を悪役令嬢と言う。だから悪役令嬢をして何が悪い。
この世界でも悪役令嬢だなんて。業腹だわ。
【おお~と、ここで新たな中世ラブロマンスの・・・王妃っぽいご婦人が乱入だ!家来を連れています!】
・・・・・あら、王妃殿下・・・この世界に来られたのね。入場券買ったのかしら。
「ミリシア・・・一体何をしていますか?ここに来てカーテシーをしなさい」
私はトップロープを飛び降り王妃殿下の前に立つ。
扇で鼻の周りをパタパタして臭いアピールしているわね。死ねよ。
「王妃殿下、御用は何ですの?追放先までいらっしゃるなんて」
「ここは臭いわね。いいわ。カーテシーは省略でいいわ。
そうね。メロディの王妃教育の続行不可能よ。だから、貴女を側妃にします。アレクサンダーとメロディの代わりに公務をさせてあげますわ。貴女が支えなさい」
【おお~と、王妃殿下だった!帰還要請のようです!ああ、悪役令嬢!パイプ椅子を持ち出しました!】
「おりゃ!おりゃ!おりゃ!ですわ!」
「ヒィ、お止めなさい!貴女は復帰出来るのですよ!」
「こちとら悪役令嬢ですわ!おら、おら!」
「流血している。止めろ!場外乱闘は最小限だ!」
「あれは客か?!それともギミックか?どっちなんだ」
「やり過ぎだ!止めろ!研修生を出せ!」
「キャア!王妃可哀想でしょう!」
大混乱に陥った。一部の観客のおば様は王妃っぽい婦人に同情をしているようだったが大半は訳が分からなかったようだ。
・・・・その後、相変わらず悪役令嬢さんは駄菓子屋と女子プロレスラーを兼業している。
「キー!悔しいですわ!」
「ワーイ、ワーイ!メンコは僕のもん!」
悪役令嬢さんも子供達に混じってメンコをしている。ハンカチをくわえて悔しがっている。
悪役令嬢さんが仕入れる物が流行するようだと広告代理店も注目している。
「仕入れに行くわよ。今度は口紅よ」
「ええ、悪役令嬢さん。ここ駄菓子屋だよ」
「フン!私は欲しい物を売るのよ」
それが許されるのが悪役令嬢さんだ。
「サトル君、さあ、手を取りなさい」
「はい」
やっと名前で呼ばれるようになった。
マダムをぶっ叩いてから少し変化したと思う。
そろそろキャミソールを着てくれるのではないかと期待している。
最後までお読み頂き有難うございました。




