あいつと飲むのは久しぶりだ
今日は久しぶりに、
遠い親戚と飲みに行くことになった。
あいつは自称・霊能力者で、
正直、怪しい商売だと思ってる。
でも、酒の席で聞く“与太話”が妙に面白くて、
俺は嫌いじゃなかった。
馴染みの飲み屋に入ると、
奥の席で手を振っている。
相変わらず、元気そうだ。
最後に会ったの、
いつだったっけ?
席に座ると、
親戚はもう生中を
半分くらい飲んでいた。
(乾杯くらい待てよ……)
そう思いながら、
俺も生中を頼む。
飲み物が届いて、
軽くグラスを合わせた。
唐揚げ、枝豆、
イカの唐揚げ。
いつものつまみをつつきながら、
他愛もない話をしていた。
どのくらい飲んだ頃だろう。
親戚が急に、
真顔になって言った。
「俺くん、
除霊で一番厄介なの、
何だと思う?」
試すような口調だった。
俺は、なんとなく答えた。
「髪の長い、
よくある女の霊みたいなやつ?」
親戚は首を振る。
「違う違う。
そんなのはまだマシ」
「じゃあ何だよ」
ハイボールを飲みながら聞くと、
親戚は生中を置いて、
ぽつりと言った。
「正解は……
男の霊だよ。
男だと分かった時点で、
俺はやらない」
「へぇ、なんで?」
普通に疑問だった。
親戚は笑いながら言った。
「怖い話、都市伝説、
心霊番組……
ほとんど女の霊だろ?
あれな、
“生き残った人間がいるから”
なんだよ。
女の霊は、
まだ話せるやつがいる。
だから、
記録に残る」
そこで一口、
生中を飲んで続けた。
「でもな……
男の霊は違う。
あいつらが出た話は、
誰も残してない。
残せないんだよ」
俺は苦笑いした。
(記録に残らない……?)
その時は、
笑って流した。
会計を済ませて、
店を出る。
夜風が、
少し冷たかった。
歩きながら、
ふと気づいた。
……あれ?
いや、そもそも――
あいつ、
生きてたっけ?




