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ある田舎者、冒険者になる

作者: 空想猫
掲載日:2025/10/15

初投稿です。

よろしくお願いします。

ギルドの扉を押し開けると、朝の光が差し込む大広間が広がっていた。


木の柱と石の床に反射する光が、まるで神聖な場所のように見える。

長机の向こうには初めて見るギルドマスターが座り、俺をじっと見つめていた。



「君がトムか。ほぅ、ネージュ村から来たのか――」



初対面の相手だ。俺は剣を握りしめ、深く頷く。

17歳、底辺冒険者――まだ何もできない少年だ。



「まずは登録を済ませることだ」



マスターの言葉に従い、俺は登録用のカウンターへ向かう。



小さな金属の箱に1銀貨を入れる。

村にいた時に貯めていた金だ。


その後簡単な書類に名前と出身地、使う武器の種類を書き込む。形式的な手続きだったが、これで俺も正式な冒険者となった。


登録が終わると、次は装備の準備だ。

ギルドを出てすぐ、武器屋へ向かう。

店内は木の棚に剣や盾、弓矢が整然と並び、壁には防具がかけられている。


俺はまず剣を手に取った。新品は高く手が出ない。仕方なく少し擦れた中古の片手剣を選ぶ。重さは手にちょうどよく、握りやすい。


次に防具を選ぶ。革鎧は軽く、動きやすい。試着して肩や胸のあたりを確認すると、違和感なく体にフィットした。


道具も忘れてはいけない。小さなバッグに食料、包帯、薬草を詰め込み、腰には水筒をぶら下げる。持っていた金銭を全て使いきり、最低限の装備だが、これで森へ入る準備は整った。


店主はにこやかに笑い、

「初めてかい?気をつけろよ」と声をかける。

俺は頷き、心の中で何度も

「絶対に生き延びる」と言い聞かせた。


装備を整えた俺は、ギルドへ依頼を受けに戻る。


掲示板から依頼書をひきはがすと、受付のマスターに渡した。


処理が終わったマスターは依頼書と地図を俺に投げてよこした。


◉依頼内容◉

「村の倉庫と食料庫を荒らす大ネズミの討伐を行え。大ネズミは通常の3倍の大きさで、数は2~3匹。夜間に活動し、攻撃性が高い。森の奥に巣がある可能性が高い。慎重に進めること。」



























村に着くと倉庫までの道は細く入り組み、途中に小川や湿地帯がある。報酬は少額だが、初めての依頼としては十分だった。


「……村人を守るのか」


自分に言い聞かせる。軽率な行動は許されない。





森の入口に立つと、湿った土と苔の香りが鼻をついた。木々の間から差し込む光はわずかで、薄暗く湿った空気が緊張を増す。小鳥のさえずりと風のざわめきだけが、静かな森の音だった。


「……よし、行くしかない」


手を握りしめ、足を踏み出す。森は想像以上に深く、足元の根やぬかるみが邪魔をする。心臓は早鐘のように打つ。


最初の数分は順調だった。小道を慎重に進み、ネズミの足跡や糞を確認しながら呼吸を整える。剣を構え、耳を澄ます。


そして、かすかな「チチチ」という爪音が響く。


「……来た……?」


茂みの陰に光る2つの目。体が硬直する。大ネズミは素早く、次の瞬間、2匹が飛び出してきた。思わず剣を振るうも、力が足りずかすっただけ。


1匹が肩に噛みついた。鋭い痛みが走り、血が滴る。逃げ場を失い、倒木に足を取られ、防御も甘く、戦術の経験もない。


さらに、誰も助けてくれる仲間はいなかった。自分1人で全てを判断し、攻撃も防御も単独で行わなければならない――その重さが、冷たい森の中でじわりと心にのしかかる。


準備不足・経験不足・そして仲間を連れず1人で戦ったこと――3重の失敗が命取りになったのだ。


膝に深く食い込む牙。倒れ込む地面の冷たさ。心臓が早鐘のように打つ。


「……死ぬのか、俺……?」


手が震え、剣を握る力も弱まる。息が荒くなり、森の匂いが血の匂いに変わる。


意識が遠のきそうになる中、トムは自分の無力さと、1人で戦うことの厳しさを痛感した。


大ネズミの1匹が前足を振り上げ、トムの顔面に打ち込む。剣を振るう力もなく、倒れ込むしかない。



「……ああ、もう……終わりか」



森は静かに、ただ黒い影を揺らす。トムは初めての討伐で命を散らした。


残るのは血の匂いと、遠くで響くネズミの鳴き声だけだ。













トムは生き延びなかった。しかし彼の死は、これから冒険者を志す者たちへの現実的な教訓となった。


「準備と経験、そして慣れていないのに一人で戦ってはいけない――それを怠れば、命はあっさり奪われる」

主人公補正の無かった冒険者の話。

この世界で死亡率の高い職業である「冒険者」を

なめたらアカンと言うことです。


よければ、評価お願いします。

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