私は善い人間になりたかった
私は善い人間になりたい
困っているひとがいれば誰であろうと手を差し伸べ
他人に迷惑をかけている者がいたら厳しく注意し
自分が嫌な目に遭わされたら広い心で許し
見知らぬ醜い老婆を母のように愛し
私が存在するだけで世界を善くするような
そんな人間になりたい
じめじめと蒸し暑い夜に
ぽつんと街角に立つ自動販売機で清涼飲料水を買って
キャップを開けたところに子どもがやって来た
痩せ細った、しかし腹部のみ膨らんだ、陰鬱な目をした男の子だった
彼は言った
「貧乏で、一週間何も口にしていません。どうか、その清涼飲料水を僕にくれませんか」
「いや……、君、それじゃほっといても死ぬやろ」
私はその子の前で、ペットボトルの中の清涼飲料水を飲み干した
私は善い人間になりたかった
すべてはじめじめが悪いのだ
不快指数のあまりの高さが、私をこんな人間にしたのだ
私は地球をこんなじめじめした星にしてしまった人類を憎む!