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わたしが死神になった日  作者: 葉方萌生
第五章 死神と知った日

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5-1

「考えたんだけどさ、まずはその、“八十神”ってやつがどういう存在なのか調べるのはどう?」


 あれから二日後、楓の家の前で再会した私たちは、自宅からそっと離れ、前回話をした公園で作戦会議を始めた。実は昨日もこちらに降り立ったのだけれど、すでに辺りが暗く、夜になっていたので、作戦会議は次回ということになった。幸い天気予報では年末まで連日雪マークがついているので、楓が冬休みの間は毎日会えそうだった。


「八十神について、調べる?」


「そう。朝葉を神様にしたっていう存在のこと、気にならないのか?」


「そりゃ気になるけど」


 初めて八十神さんの声を聞いた日の衝撃は今でも忘れられない。私だって、彼女の存在については詳しく知りたいと思っていた。でも、八十神さんの声を聞けるのは私だけだし、直接彼女に話を聞く以外、調べる方法なんてなさそうなんだけれど。そして、直接聞いたところで、答えてくれない気がするし、的を射た答えが得られない可能性の方が高い。


「八十神って名前、なんか神話っぽいし、図書館で調べてみようぜ」


「はあ」


 神話っぽい、といのは確かに私も最初に思ったことだ。でも、彼女の存在について図書館で調べるなんて方法は思いつかなかった。


「よし、そうと決まれば早速今から行こう!」


「え、今から?」


「当たり前だろ。時は刻一刻を争うんだぞ」


 刻一刻、というのが、楓が死んでしまうかもしれない時間までのタイムリミットだと思い至り、背中にひゅっと冷たい風が吹きつけたような心地がした。


「分かった。行こう」


 楓と初めて再会をしたのは確か、十二月十五日だった。一ヶ月後は、一月十五日。およそ二十日以内に、楓になんらかの危機が訪れるかもしれないなんて、考えたくもない。最悪の事態が訪れないようにするためにも、できることはなんでもしよう。

 先を歩く楓の背中に追いつくように、タタタッと歩みを進める。隣に並ぶと楓がにっこりと歯を見せて笑った。この笑顔をずっと隣で見ていたい。改めてそう思った。




 五稜郭公園のそばにある中央図書館まで、バスに乗って四十分ほど揺られていた。この時期は観光客も多く、バスの中はかなりの乗客で埋め尽くされていた。楓が一人席に座り、私は端っこで邪魔にならないように小さくなる。私の姿が見えない人間が、ぎゅうぎゅうに押し寄せて来きた。私を認知していない人とは触れ合うことができないので、そういう人たちとはぶつかることなく身体を透過して私の方に重なった。

 そんな私を見て、何かを考え込むように真剣な眼差しになる楓を、少し遠くから眺めた。彼は今何を思っているのだろう。直接聞くことはできないけれど、きっと私のことだ。目的地まで、できるだけ窓の外の景色を見て過ごした。



 図書館に到着すると、早速「神話・神話学」と銘打たれたコーナーへ向かった。日本の神話もあればギリシャ神話などもあり、それらしい本を探すのに苦労した。『やさしい日本神話』『出雲神話』『古事記超解説』など、八十神について載っていそうな本を手当たり次第手に取ってテーブル席についた。

 楓がパラパラと本を捲る。私が本を触わると周りの人からは本のページが一人でにめくれているように見えるかもしれないのでやめておいた。楓が捲る本を一生懸命眺めて、八十神について触れている箇所を探す。なかなか見つからなかった。でも、何冊目かの本を開いた時、本の巻頭のところに登場する神様の名前について、紹介されているページがあった。


「あ! ここに八十神のこと書いてある」


 楓が早速声を上げる。

 私もじっと目を凝らしてページを見ると、確かに「八十神」と紹介されている部分があった。


「えっと……『八十神とは、日本神話に登場する大穴牟遅神(おおあなむちのかみ)の兄にあたる神々の総称で、「多くの神々」という意味です。大穴牟遅神は古事記では大国主神(おおくにぬしのかみ)の一名とされています。』だって」


「神々の総称……? 一人のことを言うんじゃないんだね」


「そうみたいだ。ちなみに八十神が出てくるページは……」


 楓が、八十神についての神話が載っているページを開く。まさに「八十神」というタイトルで始まる神話が書かれていた。タイトルの横にあらすじが載っているのが分かりやすく、二人でそのあらすじに視線を落とした。


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