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わたしが死神になった日  作者: 葉方萌生
プロローグ
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わたしのヒーロー

⭐︎第8回アルファポリスライト文芸大賞にて、テーマ別賞である【切ない別れ賞】を賜りました。

ご一読くださったみなさま、ありがとうございます!

 からりとした晴天の空が、いつもより近く感じていた冬の日。ジャングルジムのてっぺんで見慣れない鳥が頭上を飛んで、私の髪の毛を掠めた。わっとバランスを崩し、心臓がどきりと止まりそうになる。無理に踏ん張った足にぴきりという衝撃が走り、顔を顰めた。


「かえで~助けてー!」


 思わず、下でサッカーボールでリフティングをしていた(かえで)の名前を呼んだ。

 少し離れたところで遊んでいた私の妹の柚葉(ゆずは)と、楓の妹の椿(つばき)ちゃんが、視界の端でこちらを振り返ったのが見えた。


「どうした朝葉(あさは)!」


「あ、足が、動かなくて」


「足? 分かった、すぐ行く!」


 すぐに危機を察してくれたのか、リフティングをやめた楓が、たたたっとすぐにジャングルジムを登ってきた。私の隣までやってきて、手を伸ばす。


「捕まって。一緒に降りよう」


「う、うん……ありがとう」


 私の手より少しだけ大きくて硬い手を握ると、不安だった心が不思議と安堵に包まれた。足は痛かったけれど、楓に支えられてなんとか下までたどり着いた。


「は~怖かった。ありがとう、楓」


「無茶すんなよ。大丈夫か?」


「たぶん、ちょっと捻っただけだから、大丈夫だと思う」


「そうか。家帰ったらちゃんと冷やせよ」


 私の頭に手を乗せてわしゃわしゃと愛犬を愛でるみたいにして撫でる楓。そんな楓の前で顔を真っ赤にしながら心の中でそっと思う。

 ヒーロー、みたいだな……。

 小学四年生、男の子と二人で遊ぶのもちょっとずつ恥ずかしくなってくる年頃。繋いだ楓の手のひらはとても温かく、この先もずっと握っていたいと思った。

 そんなこと、絶対に口に出して言うことなんてできなかったけれど。



 高校二年生になった今でも、楓は私のヒーローだった。


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