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4.利権

4.利権


 和泉の「外交官=スパイ」だという説に、奈良が一歩前に踏み出した。


「前言を撤回してください」


「そう熱くなるな」


 Vv (ウラジオストク)が逆に冷静になった。外交官としての顔にもどる。


「外交官が自国の利益にために動くのは当たり前だろう」


「しかし、その前には人間としての尊厳があるはずです」


「……」


 Vvがロシア語で呟いた。


 どのような人間であれ、言葉がまったく理解できなくとも自分がバカにされていることは理解するものだ。


 ましてや奈良は高等教育を受けている。


「かつて杉原千畝すぎはらちうねはカウナス日本領事館に赴任していた折、査証ビザを発給しています。人として素晴らしい行為です」


「チウネ?」


「センポ・スギハラだ。Vv」


「ああ」


 査証ビザを利用したユダヤ人はウラジオストクから日本に来ている。Vvが知らぬ訳はない。


 なお、続いて助けた在ウラジオストク総領事代理だった根井三郎ねいさぶろうは、中華民国ハルピン市にあったハルピン学院において杉原千畝の二年後輩にあたる。


 ハルピン学院のモットーは「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」という「自治三訣」である。


 根井三郎は生涯語ることはせず、杉原千畝も「たいしたことをしたわけではない。当然のことをしただけです」という言葉を残している。


 こうした人道的な行為は英雄的であり、誉められてしかるべきだろう。


 だが、こと外交となるとそうとも言えない。


「ユダヤ人を助けることで、日本国としてのメリットを考えなかったというのは嘘だ」


 和泉が事実をつきつけた。自国の利益を最大にする行為とも言える。


「そんな――」


 絶句する奈良の心情も理解できなくはないVvが、肩に手をやった。


「『孫子』の兵法にもあるだろう? おれたち外交官はそうした生き物なのさ」


 奈良がうなだれた。




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