各々の思惑
セリスティーナが去っていた後の廊下。
沈黙を破ったのは、ハルミルマだった。
「可愛かったねー、セリスティーナ」
その言葉に、ユウキューマがうんうんと頷く。
「魔法学園に入学するそうですね。明日、会えるのではないでしょうか」
ユキトはふふっと笑う。
「ハルマ。お前はどう思った?」
「んー、そうだねぇ」
アーサイルの言葉に、全員がハルミルマの方を見て、彼の言葉を待つ。
「いいんじゃない?」
その返事に、各々が反応を見せた。
アーサイルは軽く目を瞑る。ユウキューマはふへぇーと声を漏らす。ユキトは余計に笑みを深める。そして――
ライムルトは、セリスティーナが去って行った方向を見ながら、ぼぉーっとしている。
「ライム、どうかしたか?」
アーサイルに話しかけられ、ライムルトは我に返ったようにアーサイルを見る。
「いえ、何も――」
「もしかして、セリスティーナに一目惚れしちゃったとか!?」
ユウキューマの言葉には何も言わずに、ライムルトは一礼してからいつものようにアーサイルの後ろに立つ。
その雰囲気からは、話しかけられても何も言わないという意思が感じられる。
「明日、学園では魔力測定が行われるだろう。そこで詳しい事は知ればいい」
「おおっ。確かに! さっすがアーサーだよねぇー」
ユウキューマはアーサイルの肩をぺちぺちと叩く。
アーサイルはそれを無表情のまま払う。
「んじゃあ、俺らはこの辺で」
「そうですね」
ハルミルマとユキトはにこにこ笑いながら、三人に手を振りながらその場から去っていく。
「僕もそろそろ行かなきゃー。じゃあねぇ、アーサーとライム」
ユウキューマは楽しそうに走っていく。
残ったアーサイルとライムルト。
ボソリとアーサイルは呟いた。
「行くか」
「はい」
廊下を歩いている最中も、ライムルトの頭の中からはセリスティーナの笑った顔が離れなかった。
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