47話 ジルコンのダンジョン04
第六階層、突入。
ダンジョンをさ迷う魔物は、オクトパスとコカローチ。
「はあ??」
バリオンは、その光景に盛大なため息をついた。
「どうしました、バリオンさ……げふぅ!?」
「見りゃわかんだろ!! なんだあの虫!! 蛸以上に殺し甲斐がねえじゃねか!!」
隊員の質問が気に入らず、殴り飛ばす。
イライラとした表情で魔物たちを睨みつける。
構わずにと魔物たちがバリオンを襲ってくるも、バリオンの体に触れた瞬間、感電して消滅した。
「しゃあねえ、さっさとボスんとこまで行くぞ」
既にこの階層には用がないといった表情で、バリオンは走る。
「続けカスどもおおお!!!」
「「「おおおおお!!!」」」
殴る、蹴る、斬る、感電させる。
時には噛みちぎる。
魔物よりも魔物らしく、効率も知恵もなく、力押しで突き進む。
第六階層、突破。
第七階層、突破。
第八階層、突破。
第九階層、突破。
第十階層、突入。
フロアボスは、ジャイアントオクトパス。
五メートルを超える長い足が、バリオンたちに向かって伸ばされる。
その足を、バリオンが噛みつき、むしり切る。
「いけるな。カスども、喜べ!! 飯だ!! てきとうに腹に入れとけ!!」
「「「おおおおお!!!」」」
そして他の隊員も、次々と足にしがみつき、かじりつく。
「タコっすね!」
「タコだな!」
「味付け欲しいっすね!」
ジャイアントオクトパスの足が、小さな穴だらけになっていく。
さながら、虫に食われた葉のように。
その状況を嫌がり、ジャイアントオクトパスが大きく足をうねらす。
「うおっ!?」
隊員の何人かが、うねりに耐え切れず、振り落とされる。
また一人、また一人と振り落とされていく。
バリオンは落ちる気配もなく、食べ続けていたが。
「動くんじゃねえ!! 飯の邪魔だ!!」
食べにくいという理由で、炎の魔法をジャイアントオクトパスの頭部に叩き込む。
頭に巨大な穴があいたジャイアントオクトパスは、足のうねりが止まり、床へだらりと下がった。
そのまま、体がぐらりと傾き、床へ倒れ、消滅した。
「あ!? 飯が消える!! おいこら!!」
そして、バリオンが叫ぶと同時に、フロアの奥と中央の床が光る。
奥の床には下層への階段が、中央の床には二体目のジャイアントオクトパスが出現した。
「バリオン様! またジャイアントオクトパスが!」
「まさか、フロアボスも無限に湧き出るのか!?」
「見りゃわかる事いちいち報告してくんじゃねえ!! 俺様が目の前のこともわからねえ馬鹿だって言いてえのか!!」
「痛い!!」
バリオンの拳骨が隊員に落ちる。
うずくまる隊員を足蹴りし、バリオンの瞳は二体目のジャイアントオクトパスへと向く。
「カスども!! お替りが来たぞ!!」
バリオンの声に、隊員たちが武器を構える。
第十階層のとはいえ、フロアボスと二連戦。
いや、無限に出現するならば、何連戦になるかはわからない。
隊員たちが気を引き締める。
「が、食い飽きたから先へ行く!!」
ドゴオオオオオオオン。
ジャイアントオクトパスが突然吹き飛び、フロアの壁にめり込む。
隊員隊の目は、一瞬でジャイアントオクトパスがめり込んだ先に向き、ゆっくりと吹き飛んできた方向へと向く。
右手を前に伸ばし、ジャイアントオクトパスを殴り終えたバリオンが笑っていた。
「殺したらまた出てくんだろ? 邪魔だから埋まってろ!!」
第十階層、突破。
第十一階層、突入。
第十一階層の魔物は、分裂オクトパスと分裂コカローチ。
体が斬られると、切断面から再生する魔物である。
例えば、分裂オクトパスの足を一本斬った場合、体からまた新しい足が生えてくるだけでなく、切断された足からも体が生えてくる。
そして、二体の分裂オクトパスとなる。
文字通り、分裂し、増え続けるのである。
分裂コカローチに至っては、踏みつぶし、十以上にばらばらになった部位すべてから再生し、十体以上の分裂コカローチになるほど、強力な再生能力を誇っている。
ただでさえ、魔物が無限に湧き出ることに加え、湧き出た魔物も無限に分裂していく。
これが繰り返されれば、身動きをとれないまでに増え、圧死するだろう。
「氷!」
しかし、バリオンは興味を示さなかった。
第十一階層に冷気が吹き荒れる。
バリオンが戦う価値を感じない実力しかない魔物たちは、氷の魔法によって、一気に氷漬けにされた。
斬られたわけでも、バラバラにされたわけでもない分裂オクトパスと分裂コカローチは、そのまま分裂することもできず、氷像となった。
「最初っからこうすればよかったな!!」
床に張り付いた氷を踏み割りながら、バリオンは前進する。
「バリオン様! 仲間が氷漬けに!」
「俺の足が床に引っ付いてはがれません!」
氷の魔法を回避できなかった、隊員たちの泣言を聞きながら。
「知るか!!」
第十一階層、突破。
第十二階層、突破。
第十三階層、突破。
「バリオン様! 燃えてるコカローチが!」
バーニングコカローチが跳び回る。
全身が発火しているバーニングコカローチは、氷の魔法への耐性を持つ。
体が凍り付いたとしても、自身の炎でそれを溶かすことができるのだ。
が、バリオンの手により凍り、床へと落下した。
「カスども!! 聞け!! 燃えてる魔物は、炎ごと凍らせば終わりだ!!」
「「「無理です!!??」」」
もちろん、炎ごと凍らせることはできない。
実際は、バーニングコカローチの体には、炎の噴射口のような器官が無数にあり、そこから炎を放出する。
また、体全体を可燃性の粘膜で覆っており、炎が引火して、全身が燃えた状態を維持するのだ。
ならば凍らせるにはどうするか。
噴射口を凍らせて、炎が放出できないようにするだけだ。
もっとも、バリオンはこれを知らず、完全な力押しである。
第十四階層、突破。
第十五階層、突破。
第十六階層、突破。
第十七階層、突破。
第十八階層、突破。
第十九階層、突破。
第二十階層、突入。
第二十階層のフロアボスは、ジャイアント分裂オクトパス。
三メートルの高さに、五メートルを超える長い足。
さらには、斬られた部位から再生し、分裂する。
そう、フロアボスでありながら分裂していくのだ。
場合によっては、何十体ものフロアボスと、同時に戦わなければならない、ということだ。
「吸魂!!」
魂の魔法の一つ、吸魂。
対象の魂を吸い出し、絶命させる魔法である。
凶悪な魔法ではあるが、魔法の使用者よりも圧倒的に弱い相手にしか効果を発揮せず、また吸い出しには膨大な魔力と体力を消費する。
並の人間であれば、一つの魂を吸い出すために、限界を超える魔力と体力を消費し、絶命することさえありうる。
バリオンの吸魂により、斬られることもなく、バラバラにされることもなく、ジャイアント分裂オクトパスは絶命した。
そして、次のジャイアント分裂オクトパスが出現し始める。
「行くぞカスども!!次が来る前に、さっさと下へ降りるぞ!!」
「「「はっ!」」」
第二十階層、突破。




