『逆境のZAPPAN計画』part8
翌早朝の刻・・・
海事所には通報を受ける場所が地上にあるのだが、今回はパトロールに行ってもらう。入り江を抜けたので、浮上する。
ホッグル『イナン君 この仕事をどう思う?』
イナン『魚雷も危なくないらしいですし 火薬をもっと世のため 人のために使いたいです』
ホッグル『ほぅ 私の叔父はね 帆船乗りだったんだ だから私はこの仕事が終わったら 自分の船で仕事をするつもりなんだが 君の方が叶え易いだろうな』
イナン『そんなこと無いですよ~』
ホッグル『ん? あれは~ な! 敵船発見!』
茶色い小型船が見えたのだ。
『総員戦闘準備! 一番管 注水!』
イナン『あい あい!』
彼は消えて行った。
ホッグル『取り舵一杯 逆進 三』
エグちゃんを忙しく動かせ、目標を正面に捉える。
ホッグル『もどせ~停船 え~これだな ベント開け!』
色が決まっている信号玉を入れながら、彼は音信管から令を飛ばす。鍋でパスタへの茹でを止めたエディが、潜行バルブまで走る。しかし、腕をぶつけてしまったので、右手が飛んでいったのだが、何とか左腕でハンドルを前に回し始める。そんな中、信号弾が打ち上がる。弾の内容は、『五分以内に領海から出ろ』というものだ。
五分後・・・
ホッグル『動かんな~』
イナン『一発打ってみますか?』
ホッグル『待ってくれ・・・ 聴長、海路さんに』
海路『なんですか?』
ホッグル『その~』
海路『相手の船が動かないですか?』
ホッグル『はい』
海路『う~ん どのくらい距離が離れていますか?』
ホッグル『三十メートルぐらいです』
海路『潜望鏡で見ているんですよね?』
ホッグル『はい』
海路『ならば 拡大して 舵やスクリューを見てください』
ホッグル『なるほど もしかしたら動きたくても 動けないのかもしれませんからね』
海路『どうです?見えましたか?』
ホッグル『そうですね~舵もついてますが スクリューが止まっています』
海路『エンジンが壊れているんでしょうか?』
ホッグル『それなら接近しますか?』
海路『そうしてみましょう』
造『あ 良いことを思いつきましたよ そちらに旗を送りますね。』
布が降ってきた。ホッグルさんの顔に・・・
ホッグル『うわっぷ だっぷ』
海路『大丈夫ですか?』
ホッグル『なんですこれ?』
白地に赤い日の丸
造『現在の日本の国旗です それを艦橋の前に掲げて相手の船に向かってください』
ホッグル『それに何の意味が』
造『ふ~ん 我々が何処の管轄か 知らしめるためですよ』
ホッグル『しかし』
造『逃げたらほっとけばいいですし 逃げなければ事情聴取でも』
海路『そういうことですから お願いします』
ホッグル『あ~浮上!』
ホッグルさん、イナンさんが、艦橋に旗を沿わせる。敵船のモデルが明かされた。見た目は日本の屋形船の様だ。短いが驚きなのは、金属でできていると言うことだ。
ホッグル『取り舵十度』
相船と追い越せるように舵を取らせ。
ホッグル『面舵十度』
相船と並走したので
ホッグル『戻せ』
相船からは歓喜の声ではなく、慌てふためく声が聞こえている。そんな中、乗組員が拳銃を発砲した。その弾はこちらの艦橋に当たった。
ホッグル『あ くそ!』
この場合、我々には日本語に聞こえるが、相船側には朝鮮語に聞こえたのである。
ホッグル『潜行~潜望鏡まで』
急に現われた船に驚いて、作業が進まなかったのだろう。しかし、密漁は続いていた。
ホッグル『む? 魚雷長 敵船が』
イナン『やっと動き始めましたか?』
海路『どんな感じです?』
ホッグル『えぇ 網を投げ入れましたよ』
海路『網ですか 困りましたね』
ホッグル『な なぜです?』
イナン『魚雷と関係があるんじゃあないですか?』
海路『その通りです 網に網が絡まるとうまく使えません』
イナン『しかし 他のもすべて A魚雷ですよ?』
海路『いえ? もう違いますよ?』
イナンさんが確認する。
イナン『魚雷管の中には緑色の魚雷が入っています』
海路『問答無用ですね?撃っちゃって下さい』
ホッグル『一番管注水』
イナン『注水完了しています』
ホッグル『え~右 十』
ハハッ、なぜだか舵も十度傾いた。魚雷には問題ないが、彼女は疲れているのだ。
ホッグル『・・・撃て!』
イナンさんはダイアルを合わせたまま、発射スイッチを入れる。
さほど距離が無いからか、魚雷の軌跡が消えた。瞬きをすると、予定通り、網の絡まった相船が浮かんでいる。
海路『ハッハ~相手が悪かったね』
ホッグル『敵船 沈んでいきます』
相船は船尾から海底に沈んでいく。
造『え?』
海路『な 何!?は 早く!早く救命ボートを』
ホッグル『早く救命ボートを!』
この命令を聞くのはこの二日間で初めてだった。彼女は弱い足でオッチラオッチラ歩くより、チェリービーンズを飛ばして、エアーコンプレッサーのコックの向きを変えれることを知っていた。一、二発は外したが空気がしっかり救命ボートの方に送られる。満タンになれば送気は止まり、コックは元のバラスト行きとなった。
イナン『チ チクショ!~ なぜだ!~』
こんなに文句を言われると、消さないほうが良かったと思うかもしれない。この頃は救命ボートを引っ張り、事情を聞くと、彼らは本国に強制送還されただけだったが・・・
続く・・・