『逆境のZAPPAN計画』part7
彼女等が帰ってきたのだ。ホッグルさんは電話をするって言っていた。・・・そうか、海路さんは席をはずしてはいけなかったのか。私は知らない。知らないからな。
海路「何があったんでしょう?」
造「貴方のせい・・・」
海路「行って見ましょう。」
造「はぁ・・・」
入り口に行ってみると、案の定、水門を塞ぐように横っ腹を見せるUDボートだった。
海路「どうしたんです?入れなくなったんですか?」
甲板に全員出ている中、ホッグルさんが口を開いた。
ホッグル「どうやって入ればいいんですか!」
海路「え?あ~指示待ちだったのですね。すっかり忘れてました。」
エディ「エディ達、心配だったんだよ?シャンとしてくれよ。」
海路「すみません・・・入り方ですよね?それなら逆進を掛けながら、こちらへ向かってきてください。」
奥まで入って・・・
造「あぁ、エルーネさん。そのときに縄の代わりにリコリスキャンデーを出してください。」
皆「はい!?」
造「貴方の能力ですよ。お菓子を作り、操れます。腕を伸ばして、棒状のアメを考えてください。」
エルーネ「こんな感じですか?」
彼女は右手を私達の方に向ける。伺っていると、ピンク色に手の平が光った。
造「グッハ!」
私は、もっと柔らかい物が出てくるものだと思っていた。
海路「え?あ!造さ~ん!」
しかし、アメは柱のように硬く、少々こちらへ曲がっていた。
エルーネ「そ、そんな!?」
私から血は出てこなかった。
造「ダ、ダイジョウブデスヨ。」(頭じゃなくて良かった~)
私は胸に手を当て、蛍の光をまとう。
造「うん、イチゴ味か・・・まさか、皮膚で味わうとは。」
エルーネ「す、すみませんでした。」
造「だからいいんですって。それより、ロープのようなアメをここに結んで下さい。」
エルーネ「ちょ、ちょっと待っててください。」
彼女は慎重に梯子を降りてくる。
造「ここに巻きつけてください。」
彼女はピットと言うものにためらい、確かめながら、巻き付ける。皆が降りてきて・・・
海路「改めて、君達に重大発表があります。」
イナン「それなら飯を食べながらでも・・・」
海路「う~ん、そうですね。」
我々は喫茶に入店した。
造「何が食べたいんですか?」
ホッグル「食えれば何でも良い。」
イナン「女姓陣で決めてくれ。」
エディ「またお好み焼きが良い!」
エルーネ「いえ、私達の国でもさすがに昼夜同じものは食しませんよ。」
エディ「え?~」
造「いえ、大丈夫ですよ。」
エルーネ「え?」
造「何てったって、お好み焼きですから。」
エディ「ん?」
造「お好み焼きは元は小麦粉、つまりパンと同じです。」
エルーネ「ほ~だとしても・・・」
造「なんです?ソースですか?」
エルーネ「そうですね。あんなに辛いものは体によくありません。」
造「確かに・・・では何をかける、もしくは入れましょうか?」
エルーネ「やはり夜は魚でしょうか?」
造「それこそ、鰹節ではありませんか。」
エルーネ「あぁ、だったら野菜です。」
造「野菜ですか?う~ん、何がありましたっけ?」
エルーネ「人参、とかですか?」
造「はぁ、人参ね。それでいこう。それを短冊切りにして・・・他には?」
エルーネ「葉物野菜は何がありますか?」
造「白菜とか。」
エルーネ「ではそれも。」
造「これを焼くんですか?」
エルーネ「お好み焼きでしょう?」
造「しかしこれはもうお好みでない方が。」
エルーネ「エディちゃんはお好み焼きを求めているんですよ。」
造「し、しかし。だ、だったら。エディちゃんに聞いてきます。」
私は調理場を後にする。
食卓でポーカーをしているエディちゃんに話を聞く。
造「ねぇ、エディちゃん。」
エディ「うん?何?」
造「エルーネさんの料理をどう思うか教えてくれないかな?」
エディ「別に~やらせておけばいいんじゃない?」
造「そ、そんな~・・・知らないからね。」
皆が戻ってきて、あのお好み焼きを運び、食べ始める。小声で愚痴を漏らす少女も居る。
エディ「うわ~人参焼いたのか~これなら自分で作ればよかった。」
エルーネさんって結構、頑固だよな。何があったんだろう?
造「お~と、忘れるところでした。」
海路「うん?」
造「あれ?皆忘れてしまったのですか?勿論、覚えていますよね?」
海路「え?何のことですか?」
造「ほら、さっき言ってたじゃないですか。」
海路「すみません。」
造「あ~拓馬君。」
拓馬『はい?』
海路「え?」
造「お~拓馬君、起きていたかね。」
拓馬『・・・なんです?』
いや、拓馬君は寝ていたのだ。しかし、彼の声は我々に響いている。
造「海路さんが食事前に言ったこと覚えてる?」
拓馬『アラタメテ キミタチニジュウダイハッピョウガアリマス』
造「その通り。え~お分かりの通り、彼は睡眠中に会話が出来るだけでなく、一日間のログも見せてくれるのです。」
海路「ログ?」
造「会話や音だけですけど、記憶ですよ・・・」
突然だとは思うが、エディちゃんの体がピクついた。
エルーネ「どうしたんです?エディちゃん。」
エディ「い、え?なんで私なの?」
エルーネ「エディちゃん。何かあったのですか?まさか拓馬さんに。」
エディ「いいんだよ、エルーネさん。」
エルーネ「あ・・・」
エルーネさんは何かを悟ったようだ。
エディ「た~」
エルーネ「そう、人参が嫌いなのですね?」
エディ「え?」
エルーネ「いいのですよ?嫌いなら嫌いと言ってくれれば。」
エディ「いや、嫌いではないんだけど。」
エルーネ「だったらなんですか?」
エディ「え、あ~人参ってさ、焼くイメージあるの?」
エルーネ「焼く、ですか?」
エディ「うん。」
エルーネ「焼かないんですか?」
エディ「私は焼いた人参なんて食べたことないよ。」
エルーネ「それで、どうでした?」
エディ「いや。」
彼女はフォークでお好み焼きを食べる。
エディ「なんだ、美味しいじゃん。」
エルーネ「良かったです。」
続く・・・