『逆境のZAPPAN計画』part6
暗い路を見渡す・・・(こんなに暗かったのな。)私の蛍を放し飼いにすると、黄緑の髪が見えた。しかし彼女は何も言わずに小道に入った。神菜海事所ではない。うちの地下室だ。(海路さんにも開け方は教えてないはずだが、追いかけるしかないな。)
スロープを登る前から、外の明かりが見える。
エディ「ようやく来たの?しょ・ちょ・う。」
造「え?」
左で声がした。かなり可愛いはずなのに、気味が悪い。一体何が始まるのだろう?
海路「最後の一パックですよ。」
造「え?」
ホッグル「食事ですよ。このパンみたいなの、かなり美味しいですよ。」
・・・これが昼食か。昔はたまに食べた、近所のお好み焼きだった。奥に九パック見えるのだが・・・ともかく、頂こうじゃないか。
一ミリブンカー・・・資材供給済み
海路『いつもはホッグルさんが指揮を執りますが 訓練では私が指揮を執ります 粗相の無いようにお願いしますよ それでは 訓練開始』
彼は海事所の地下で万が一に備えて、拓馬くんと通信をしている。私は見送りで来ただけだ。日差しが艦体を包み込む。(おっと大事なものを忘れていた。)紫Zと緑Nを掛け合わせた紋章?として、艦橋に耐水塗料を上乗せした。実に面白い。私は発明所に戻ろうか。海事さんに挨拶していくか。
固定式回転椅子にふんぞり返っている、海路さんと目を合わせた。
造「ではこれで。」
海路「待ってください。まだ見て行きませんか?」
造「う~まぁ、やることもありませんし・・・」
UDボートは、面倒ごとを避けるため、大海原に差し掛かるまで、浮上しなかった。周りに船は居ないのに。
海路「正面に的を造ってくれませんか?」
造「はい?」
海路「的ですよ。水面に中心が来るような、円形でお願いします。」
造「ま、まぁいいですけど。」
白、赤、白の的を艦首数メートルに一つ練成する。遠くて分からないが、ナノマシンは確かに練成を完成させている。
造「出来ましたけど?」
海路『拓馬君?ホッグルさんに繋げてくれませんか?拓馬君?』
彼は椅子横のボタンを押しながら空間に話し始めた。
エディ『なんです?』
海路『あぁ エディちゃん』
エディ『ん 用件は?』
海路『ホッグルさんに繋いでくれるかな?』
エディ『は~繋がってますよ~どうぞ』
レバーで通信のオンオフが出来るのだ。
海路『ホッグルさん 前方に紅白の的が見えますか?』
ホッグル『はい?海路さんですか?』
海路『そうです 的は見えますか?』
ホッグル『はい』
海路『あ~まず停船してください』
ホッグル『あ て 停船』
メグに令が飛んだ。
海路『そして 信号弾を入れてください』
ホッグル『ふ 浮上』
梯子を叩く音がして・・・
ホッグル『え~これだな』
海路『・・・入れましたか?』
カンカンっと金属板を走る音がして
ホッグル『入れましたよ 向きも確かめましたし』
海路『素晴らしい そうしたら 潜りながら艦橋内で 発射令を出してください』
ホッグル『分かりました 九メートル潜水』
ホッグルは、艦橋内へのハッチから令を飛ばしたのだろう。
海路『拓馬君 艦橋内に繋いでください』
エディ『あ 聴長 起きてください 聴長?』
拓馬『は はい?艦長ですか?』
エディ『そうです 艦長です』
拓馬『あ~どこです?』
エディ『艦橋内ですよ』
拓馬『あ ありがとうございます』
カチッと艦橋外の通信は遮断された。
造『あ 失礼します ホッグルさん 左の壁にボタンがあるでしょう?』
ホッグル『えぇ これで花火を上げるんですか?』
造『その通りです』
ホッグル『押しますね?』
造『どうぞどうぞ』
彼との通信は、壁に何かを叩きつける音で途絶えた。
ホッグル『どうです?』
海路「造さん、どうですか?」
造「え?私が?えっとですね~あ!黄色い煙が見える。なんて書いてあるかは分かりませんが・・・」
海路「結構。」
再度ボタンを押しながら
海路『ちゃんと打てたようです なので さっきの的を狙ってください』
ホッグル『勿論 魚雷で ですよね?』
海路『はい 拓馬さん 魚雷室にも繋げてください』
拓馬『魚雷室も ですね』
カチッ
海路『注水を指示してください』
ホッグル『魚雷長』
イナン『なんです?』
ホッグル『一番管に注水お願いします』
イナン『終わりましたけど』
ホッグル『ハッ!?』
イナン『お言葉ですが 艦長ですよね? 敬語は結構なんで 命令してくれません?』
ホッグル『すまない』
イナン『次は何をすれば・・・』
ホッグル『ま 待ちなさい』
ホッグル『海路さん』
海路『なんです?』
ホッグル『イナンさんはどうしてしまったのですか?それとも・・・現代の潜水艦はこんなに速く 注水が出来るんですか?』
海路「ほぅ、造さん?何か知ってますか?」
造「実は、彼等に少し能力を授けまして・・・」
海路『能力?』
海路さんは椅子のスイッチを入れている。
造『はい イナンさんは高速行動 ホッグルさんはガラスに近づけないので カメラモード さらに空間把握』
海路『空間把握?』
造『はい 今から起動するはずです』
海路『何をするんです?』
造『なにをって 魚雷を撃つに決まってるじゃあないですか』
ホッグル『どうすればいいのですか?』
造『目標を 潜望鏡で 覗くだけ・・・いえ 目視でも 定めればいいのですよ』
ホッグル『う~ん こんなんですかね~ お?黄色い枠に囲まれましたよ?』
造『はい 魚雷の発射を命じれば発射してくれますよ』
ホッグル『魚雷 発射!』
イナン『発射~』
ホッグル『雷跡が見えます』
息遣いが聞こえる。ホッグルさんの返事から続く。
ホッグル『消えまし・・・いえ 当たりました』
海路『どうなっていますか?』
ホッグル『此処からでは見えませんね 近づいたら連絡します』
造君のナノカメラが、浮上するDUボートを投映する。
ホッグル『網が漂っています』
黒い網には傷は無く、的には丸い跡がいくつもある。
海路『それでは帰港して下さい』
ホッグル『回収なんてしないんですか?』
海路『こちらでやっておきますから』
ホッグル『はい』
海路「造さん。」
造「はいはい。」
海路「回収できましたか?」
造「あぁ。これでいいですか?」
造達の前に練成したものは、乾いて丸まった網と、赤色の魚雷の残骸だ。
海路「的はどうしたのです?」
造「入らなかったので、置いてきました。」
海路「え?海の上に?」
造「はい。」
海路「では直してください。」
造「分かり・・・う~ん。」
海路「どうしました?」
造「的は直しましたが、分解って意味ですか?」
海路「あ、あ~そうしてください。分解しちゃってください。」
造「分かりました~」
海路「え~っと、どうでした?」
造「私も乗ってみたいね~」
海路「いや、魚雷についてお願いします。」
造「うん?う~ん、そうだね~」
海路「やっぱり、新魚雷も考えてくれませんか?」
造「はい?」
海路「あの魚雷では物足りません。」
造「私も持てる知識は出して行くつもりですが、どの辺りが足りないんですか?危ないのは造れませんよ。」
海路「網も使い方を間違えれば鈍器になります。」
造「鈍器?ですか・・・」
海路「そうなんですよ。」
造「そうですね~・・・デンプン、D魚雷。」
海路「はい?」
造「えっとですね?デンプン拳銃を警察が近頃、導入するらしいんですよ。それを魚雷に応用出来たらなっと。」
海路「いいですねぇ~粘着式って感じでしょ~」
造「はい。試作品を用意しますから、そちらもえ~迎えの準備でもしといてください。」
海路「貴方についておきますよ。ブンカーに持っていくのも大変でしょ~」
造「すぐに終わるので、どうぞご自由に。」
海路「あ、良いんですか。」
一ミリブンカーの物置き場・・・
造「デンプン銃はですね、少し熱くなくてはなりません。固まってしまいますから。」
海路「デンプン銃って何ですか?」
造「正式名称・・・デンプン射出銃。金属原子と混ぜたデンプンをガウス加速器で・・・射出するって物です。」
海路「・・・やけに詳しいですね。」
造「あ、あぁ。警察に知り合いが居るからですね。」
海路「ほ~う。」
造「ん~」
海路「それで?造らないんですか?」
造「ふん。」
A魚雷を思い描きながら、新たな魚雷を練成する。これが浪漫の練成術だ!
造「よ、よし。」
こんなとき、フォーンっと汽笛音がこのブンカー内に響いた。
続く・・・