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第8話 欠陥奴隷は巻き添えになる

 今度こそ俺は動けなくなった。

 サリアにスキルの所持数を知られている。

 これは本当に不味い。


(どうして分かったんだ?)


 頭が上手く働かないが心当たりはある。

 おそらくはサリアの持つスキルの効果だろう。

 スキルの中には、相手のステータスを可視化するものがあるのだ。


 それで俺の能力を確かめたのではないだろうか。

 確証はないものの、サリアは俺を凝視していた。

 あの瞬間にチェックしたのだとすれば可能性は高い。

 他の理由も思い付かなかった。


(いや、そんなことはどうでもいい)


 俺は意識を現実へと戻す。

 考察なんて後回しだ。


 サリアは俺を不思議がっている。

 価値のない雑魚から、興味の対象へと移ったと考えていいだろう。

 少なくとも、いきなり殺される雰囲気ではなかった。


 ただし、油断は禁物だ。

 互いの間にはそれなりの距離があるものの、サリアは魔術師だ。

 この程度の間合いは意味がない。


 もし魔術の一つでも穴に打ち込まれたら、中にいる俺は簡単に死ぬだろう。

 だから言動は慎重に選ぶ必要があった。

 くれぐれもサリアを怒らせないようにしなければ。


(誤魔化したり、嘘を言うのは駄目だ。きっと見抜かれてしまう)


 サリアの視線を受ける俺は必死で考える。

 こうして迷っている時間すら神経が削れていく。

 あの恐ろしい魔術師に生死を握られている状況なのだ。

 平常心でいられる方がおかしいだろう。


 色々な考えが頭の中を巡る中、俺が辿り着いたのは真実を伝えることだった。

 何の策もない結論だがこれしかない。

 絶対に敵わない相手なら、とにかく誠実に応じるしかないだろう。

 声の震えを自覚しつつ、俺は丁寧に話し出した。


「元から持っていた【死体漁り】のスキルが進化したんだ。それから、死体からスキルを奪えるようになった……」


「あらまあ、そんな隠し効果があったのねぇ。知らなかったわぁ」


 サリアは頬に手を当てて笑う。

 どうやら喜んでいるらしい。

 とりあえず彼女の疑問が解消できたようだった。

 何度も頷きつつ、楽しそうに俺のことを眺めている。


(これは逃してもらえるんじゃないか?)


 場の空気感から俺は希望を抱く。

 サリアの機嫌は損ねていない。

 むしろ友好的な様子と言えよう。

 いきなり背を向けるのは怖いが、話の流れで立ち去る許可を得るのは良いと思う。


 そう考えた時、サリアの背後で物音がした。

 明らかに人間の気配だ。


(今度は何だ?)


 嫌な予感を覚えながら、俺は物陰に注目する。

 そこから現れたのは、武装した一人の兵士だった。

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