第75話 欠陥奴隷は帰還する
討伐対象である魔族が死亡した。
使役された魔物の軍勢も殲滅された。
つまり、ギルドでの依頼は遂行できたということだった。
此度の戦いに参戦した面々は帰還を開始する。
軽傷の人間が率先して守りを固めて全体を先導していく。
重傷者は庇われるようにして移動する。
戦死者は戦場にて簡易的に葬られた。
遺体ごと持ち帰る余裕がないので、関係者が装備の一部だけを確保していた。
俺も埋葬作業を手伝った。
その際に遺体に触れたので、当然ながら所持スキルが増えている。
>スキル【測量】を取得
>スキル【死んだふり】を取得
>スキル【援護】を取得
>スキル【支援】を取得
>スキル【命令】を取得
>スキル【降参】を取得
>スキル【道具作成】を取得
>スキル【投擲】を取得
>スキル【罠術】を取得
>スキル【双剣術】を取得
>スキル【拳術】を取得
>スキル【投槍】を取得
>スキル【二段突き】を取得
さすがに英雄や魔族に比べると地味な気もするが、十分に有用だろう。
合体させることでさらなる効果を発揮してくれるはずだ。
それにしても、今回は本当に大量のスキルを手に入れた。
実際に使ってみて長所や短所が見えたものも多い。
生死に直結するため、運用は真剣に考えるべきだろう。
帰路において俺は、周囲の警戒を担当した。
もし魔物や盗賊が襲ってきた場合、迎撃するのが役目である。
戦いで受けた傷は既に再生を終えて完治していた。
魔力の消耗も回復ポーションで補っている。
軍全体を見回しても、俺ほど元気な人間は珍しいのではないか。
誰もが全力で戦っており、怪我の有無はともかく、疲労しているのは確かだった。
本当の意味でいつも通りなのは、サリアくらいだと思う。
隣を歩く彼女は上機嫌であった。
進化し続ける魔族を叩きのめしたのが痛快だったらしい。
あれほど粘る相手は久々で、強力な術を放てたのが楽しかったと話していた。
サリアにとっては、今回も真剣な戦いではなかったらしい。
英雄に匹敵するどころか、遥か上の強さを持っているようだった。
(本当に何者なんだ?)
俺は横目でサリアを観察する。
鼻歌混じりに結界を展開した彼女は、周囲の人々を気軽に保護していた。
彼女の過去については詳しく知らない。
ひょっとすると、俺が想像するより危険な人物なのかもしれない。
こちらから訊くつもりはないが、いつか素性を知る時が来るのだろうか。
そういったことを考えながら移動を続ける。
途中、長時間の移動が厳しい怪我人は近くの都市に留まることになった。
傷が癒えるまで療養する手筈となっている。
自力で動ける者達は、それぞれが拠点となる地へ帰還した。
俺とサリアも元の街に戻る。
ちなみに英雄ニアとは途中で別れた。
話を聞いたところ、王都へ報告に向かうそうだ。
英雄が二人も死ぬという事態は、国も予想外だろう。
元々は過剰戦力といった具合だったが、実際はこの有様である。
その被害の大きさについて糾弾されるのではないかと噂されていた。
「理不尽な対応だな。あれだけ頑張って勝ったのに」
「そういうものよ」
サリアが涼しい顔で反応する。
どこか皮肉った言い方なのは、過去に色々あったのかもしれない。
俺は曖昧に頷くだけで、それ以上の言及はしなかった。
街に到着した俺達は、他の冒険者と共にギルドへ赴く。
そこで戦果を報告した。
順番待ちの最中、俺は前に並ぶ冒険者に詳しい説明を教えてもらう。
基本的には参加した時点で基本報酬が発生するらしい。
途中で勝手に逃げ出したりしていれば別だが、誰でも貰える報酬である。
魔族との戦争だけあって、なかなかの額が支払われた。
ここで初めて知ったのだが、基本報酬の他にも追加報酬があるらしい。
特筆するだけの戦果を挙げた者に支払われるそうだ。
自己申告制で、後日に王国軍の記録と照らし合わせて真偽が判断されるという。
虚偽報告ではなく、なおかつ追加報酬に相応しいと見なされると貰える仕組みであった。
よほど目立った活躍でないと認められないらしく、普通は考慮しないものらしい。
こういった場合の冒険者達は、魔物の死骸を売却して報酬の足しにするのだそうだ。
ただし今回は死骸が灰となってしまったので、総合的な利益は少なめである。
期待を下回る結果だが、それに文句を言う者は少なかった。
冒険者の仕事とはそういうものなのだ。
上手くいかない中で、たまに成功して儲けが発生する。
それを楽しめるくらいでなければ続けられないのだろう。




