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欠陥奴隷の英雄偽譚 ~レベル上限のある世界をスキル強奪チートで這い上がる~  作者: 結城 からく


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第62話 欠陥奴隷は英雄の奮闘を見る

 首から上を失ったダンが動きを止める。

 膝から崩れ落ちて、断面から鮮血が噴き出した。

 真っ赤な赤が地面を染めていく。


 一部始終を目撃した兵士と冒険者の間でどよめきが起こる。

 もちろん俺もその一人だった。


(まさか"鉄壁"のダンが即死だと……!?)


 あの男について詳しいわけではないが、ここまでの戦いぶりはしっかりと見ていた。

 彼は魔族の攻撃をほぼ無傷で防ぎ続けてきた。

 体質的に頑丈なのが大きいものの、それを腐らせないだけの技量の持ち主だった。


 ところが、そんなダンがあっけなく殺された。

 変貌した魔族は能力が格段に向上している。

 おそらく指先から雷撃を発射したのだろうが、まったく見えなかった。

 回避困難なのに防御特化の英雄を即死させるだけの破壊力とは、あまりにも恐ろしい。


「よくもダンを……ッ!」


 我に返ったウィズが激昂して、殺意を全開にした。

 彼女が杖を振るうと、血の縄が動いて魔族に巻き付いた。

 そのまま軋むような音を立てて締め上げていく。


「ああ? 真面目にやれよ」


 魔族が鼻を鳴らして身じろぎする。

 それだけで血の縄がまとめて千切れ飛んだ。

 変貌前は行動を制限できていたのに、現在の魔族には何ら意味がないらしい。


「まだ、だ……!」


 悔しげなウィズが叫びながら杖を動かす。


 縄の残骸が浮遊し、一つひとつが赤黒い短剣に変形した。

 それらが魔族に向かって射出される。

 血の短剣は魔族に突き刺さるも、先端から崩れて消滅していった。


(あの攻撃も通用しないのか……)


 感知系スキルを有効化した俺には見えていた。

 鱗に刺さった血の短剣は、魔力を吸収されて術が保てなくなったのだ。


 ウィズは戦場から新たな血を引き寄せようとする。

 このまま追撃を叩き込むつもりらしい。

 今までのやり方は効かないのに、まだ策が残っているのだろうか。


 次の瞬間、魔族の姿が霞んだ。

 凄まじい速度でウィズの背後に回り込むと、無造作に腕を突き出す。


「あ、ぁ……っ!?」


 驚愕するウィズが吐血する。

 彼女の胴体が、魔族の片手に貫かれていた。

 無骨な手には脈動する心臓が握られている。

 魔族は腕を引き抜いて、その心臓を口に放り込んで咀嚼した。

 胴体に穴の開いたウィズはうつ伏せに倒れる。


 直後、戦場に染み込んだ血が集結して、魔族の全身を覆い尽くした。

 泡を立てて沸騰し、高熱で魔族を蹂躙しようとする。

 死にかけのウィズが全力で反撃を試みているのだ。


 ところが沸騰する血液は四散した。

 吸収をものともしない魔族が衝撃波で吹き飛ばしたのである。

 決死の攻撃も、やはり効果が薄かったのだった。


「クソが。余計な真似をしやがって」


 悪態を吐く魔族は全身から白煙を上げている。

 鬱陶しそうな顔をしているだけで、まったく効いているようには見えない。


 魔族は倒れたウィズの上半身を踏み潰した。

 華奢な両脚が驚いたように痙攣し、すぐに動かなくなった。

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